倉本氏:エクアドルにこんな民話があります。山全体が炎に包まれるような山火事が起こり、多くの動物が避難していた。しかし、小さなハチドリだけが残り、近くの川を往復し、火事を消そうと一滴の水をせっせと運んでいた。避難する大きな動物たちはそんなハチドリに向かって、「君がそんなことをしたって無駄だってことが分からないのかい? 君が運べるような一滴の水なんかでこの山火事は消えやしないに決まっているじゃないか!」と笑うんです。しかし、ハチドリは彼らに向かって静かにこう答えた。「僕ができることは確かにこれだけ。でも、僕は今、自分のできることをやる」と。
現代社会は"生きること"の原点を支える要素や精神の立ち位置を隠し、目先の経済効率のみが重んじられているようです。そして、強大な力を持ってしまったお金の有無やその量で、社会活動が判断されるようになってしまったように感じます。
酸素を呼吸し、水を飲み、食事をする。この基本的なことをありがたいと感じ、その素晴らしさに感動できれば、地球を自分のこととして受け入れることができるのではないでしょうか。
2010年11月16日 倉本聰さんの書斎にてインタビュー