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脚本家・劇作家・演出家 富良野自然塾塾長/富良野GROUP主宰 倉本聰さんインタビュー

 

倉本氏:お金というものが社会を支配するようになってずいぶん永い時間が流れました。近年、貨幣経済が起因するさまざまな弊害が起こっています。
僕たちは今、このお金のもたらす影響力とその意味を根本から考えるタイミングに来ているように感じています。僕が『北の国から』で書いた黒板五郎という人物は"人間は果たして本当に、お金無しでも生きて行けるのだろうか?"という実験でもありました。
欲しいものを手に入れる手段として、東京ではありえないが、富良野では成立することがあります。自分はカボチャを持っているがお米はない。そんな時、隣家の農家に自分の作ったカボチャを持って行き、お米と交換して欲しいと伝え、それを相手が受け入れたら物々交換が成立します。ここではお金が介在することなく、自分の欲しいものが手に入れる生活の仕方があるんです。
1984年にスタートし、26年をもってこの春、閉塾した演劇人養成私塾「富良野塾」の塾生たちは、昼間は近隣の農家で農作業を手伝い、その対価として農作物を受け取るというライフスタイルをとっていました。塾生たちは食べ物を手に入れると同時に、種を蒔くところから立ち会い、その収穫を共に実感するという農業のものづくりの難しさや感動も味わっていたはずです。そして夜や農閑期は集中して演劇の勉強や身体を動かす訓練をするというカリキュラムでした。

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倉本聰さん

 

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