編集部:南極には国境もなければ、どこかの国の領土というわけでもない、地球上でも非常に特殊な場所だと思います。その南極に多くの国が基地を持っていますが、観測という側面から、また生活を支え合う人道的な立場から、諸外国とはどのような関係を維持されているのですか?
石沢:現在南極には約40の国々が基地を張っています。そういった国々が毎年一回開催される国際会議において、さまざまな情報交換や研究結果の発表、安全面等における協力体制等を確認しあっています。国を超えて実施される共同研究もありますし、病人や遭難などの有事に助け合うことも多々あります。ただ現実問題として、昭和基地から一番近い外国の基地と言ってもおよそ1,000kmも離れたロシアの基地がお隣りさんという関係性ですから、移動が困難な冬季はそれぞれに自力でなんとかしなければならない状況であることは確かです。夏季には日本の基地にも色々な国の方々がいらして、一緒に研究したりしますし、“しらせ”に乗船する南極観測隊員の国籍は日本人に限定していません。タイ、ベルギー、韓国、南アフリカの方々などが今までに参加されています。
私自身も何度か外国の基地を訪問したことがありますが、アメリカ基地などは非常に整備されています。特に夏季には1,000人くらいの人口となり、もう町と呼んでいい規模です。教会、スーパーマーケット、ボーリング場、それにバーもあります。