編集部:先ほど南極観測の大きなミッションのひとつとして挙げられた「南極でしか観測できない情報」とは、具体的にはどのようなデータを指すのでしょうか?
石沢:南極には純粋な地球環境が今でも残されています。例えば大気。南極では息を吐いても白くないことはよく知られていますが、排気ガス等で汚染されていない空気はまさに研究対象です。地球にとって“外的、かつ後天的”、つまり多くの人間が生活することで汚染される要因がないために、地球環境そのものの情報を非常にピュアな状態で採取出来ます。
そういう意味からも、観測隊が活動する際に使用する車両や機械、日常生活で必要とされるエネルギー確保もより環境負荷が少ない自然エネルギーを使えるようにしなければいけないと考えています。現在はこれらも大きな行動目標として掲げ、改善に努めています。実際、観測船“しらせ”が南極へ輸送する物資の6割は燃料(油)です。今後は、積極的に自然エネルギーへ切り替えてゆきたいと考えています。南極は風力や太陽エネルギーを活用するには、大変効率のよい条件を備えた場所です。もちろん、現状においてはその低温や強風対策への課題があり、目標の実現までにはまだ時間がかかりそうですが、将来的には観測隊が消費する使用エネルギーの10〜20%を自然エネルギーでクリーン化したいという計画があります。