当然ゴミ問題も然りです。南極滞在中に廃棄されるゴミの処理についても私たちはしっかり取り組んでいかなければならないと考え、これについては既にしっかり対処しています。日本が南極観測をスタートしたのは昭和31年のことですが、正直申し上げて、当初はそういった意識がなかったことも事実です。汚水や廃棄したゴミをそのまま海に流したり、放置したりというような状況がありました。しかし、南極というのは低温状態がずっと持続する場所ですからゴミや廃棄物がそのまま残ってしまうわけです。そこで2005年、“昭和基地クリーンアップ作戦”が計画、実行に移されたのです。南極は雨が降りませんし、非常に大気も乾燥しています、そのため建物の保存状態は想像以上に良好で一次隊当時の建物も残されたままでしたし、適切な処分できないまま放置されていた車両や機械など大量のゴミがそのまま残っていました。それを4か年計画で一掃したのが“昭和基地クリーンアップ作戦”というわけです。それ以来、昭和基地でのゴミ処理対策は徹底し、“しらせ”は往路では油を輸送し、復路では処理済みのゴミを持ち帰ってきています。
編集部:先日、このクリーンアップ作戦に参加された元観測隊員の張替さんにお話を伺ったところ、南極では生活ゴミが想像以上にたくさん出ることを話されていました。現地では生活ゴミはどのように処理をされているのですか?
石沢:そうなんです。予想以上にゴミの量は多いですね。やはり人間がそこで生活するわけですからどうしても出てしまうんです。まず生ゴミですが、これは持ち帰れないので現地で蒸し焼きにして炭にするというシステムを採用しました。その他の燃えるゴミも小さなものは焼却炉で燃やしますが、基本的には燃えないゴミと共に持ち帰ります。また、生活から出る汚水、トイレや厨房、洗濯、風呂の排水については汚水処理をしっかりと施し、浄化してから海に流すようにしています。そして予想外にたくさん出るゴミと言えば、様々なモノを持ち込む際に出る梱包資材です。段ボールや木枠材などが大量に出ます。それら合わせて毎年200トンのゴミを持ち帰っています。行きの荷物は1000トンほどで、そのうちの6割の600トンは燃料、これは帰りにはなくなりますし、食料なども現地でなくなります。“南極に持ち込んだものは全て持ち帰る”を原則とし、今後はこれをさらに真摯に、確実に取り組んでいかなければならないと考えています。