私たちはともすると「木を植えれば、そのまま育つ」を思いがちですが、そうではないのですね。
--「植林」と「育林」という言葉がありますが、森をつくるにはこの「育林」という作業と意識が大変重要なのではないかと思います。土に木を植えたら、「苗は自然に育つ」と考えがちですが、植林したばかりの苗木への水やりは欠かせません。休暇村では今も継続して苗木を植林していますが、残念ながら育つことなく枯れてしまう木はどうしても出てくるのです。そうした場所には、適切に補充するべく、再度苗を植えています。
整地、覆土をしたばかりの土地は、表土がまだ植物を育てるだけの力が十分ではありません。つまり、水を吸収し、それを適切に含み、しかも養分を与えられる準備の整った土台ではないのです。この状態ではまだ植林は出来ません。整地が終わったら、まずは牧草のような草の種を蒔き、山特有の強い雨でも表土が流されない状況にまで持っていく段階があり、緑の草地になるのを待って、やっと「植林」ができる土台ができるのです。
植林には、まずこの土地に苗をならすために、苗場をつくり、そこで、苗を一年間育成し、その後、覆土した場所に苗を植え替えました。植林をした最初の一年はまめに水をやり、木が土地に馴染むかどうか注意深く観察しながら適切な世話します。苗木がしっかり根を張り、枝から新芽を出してきたら、まずはひと安心できますが、それまでは気が抜けません。
さて、そうした苗木が育ち雑木林のようになったら、今度は下草を刈ったり、枝を払ったりする仕事が待っています。これが「育林」の一連の作業、つまり「育林」とはエンドレスな仕事です。
旧群馬鉄山閉山後、自然が本来の姿を取り戻すよう、覆土・植栽整備など膨大な時間と費用をかけ、森林再生のプロジェクトも何とかここまでたどり着きました。自然には自分で回復するパワーを本来持っていますが、人間が自然に手を差し伸べなければ、これほど早く山は元の姿に戻ることはできなかったと思います。自然は何も言いませんが、緑が濃くなるこの季節になると、感謝の気持ちをそっと伝えてくれているように感じますね。 |