蛍光灯リサイクル工場を訪ねて
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第二部:蛍光灯リサイクルの流れ
 

全体の約半分の水銀が蛍光灯の製造に使われています。
伊吹一省さん  
問い ところで、日本国内での用途別水銀の使用量はどのような状況なのでしょうか?
昨年京都で蛍光灯にリサイクルについてのシンポジウムがありましたが、そこでは、2003年に日本で年間約15トンの水銀が使われていて、そのうち蛍光灯が半分近くになると報告されていました。(コンシューマーズ京都「蛍光管の適正処理をめざすフォーラム2006」より)

蛍光灯は、年間で3億5000万本、約60,000トンが販売されており、これが廃棄物として排出されていることになります。そのうち、細長い直管が大半を占める産廃系が31,000t、一般廃棄物系(家庭系)は29,000t。家庭系は直管よりも丸型や変形タイプの蛍光管がより多い傾向があります。現在、国内のリサイクル工場で処理されている蛍光灯は、全廃棄量の20〜25%程度にとどまっています。
   
蛍光灯国内販売量t数比較
   
  問い 工場の処理能力をお聞かせくださいますか?
工場の能力は近年、飛躍的にアップし、処理能力は年に6,000トンです。従来は、直管だけが処理対象でしたが、丸管や異形のものにも対応できるようにしています。ただ、入荷する蛍光灯の大半を占める直管は、年末や年度末に集中して入荷する傾向があり、年間でみると、12月と3月に処理量が急増しますので、その時期は対応が大変です。
   
  問い 現状の蛍光灯リサイクル作業での問題点は何ですか?
まず、回収のネットワークづくりでしょうね。なにしろ今まで無料で廃棄でき、それを埋め立てていた訳で、自然環境に対して危険性もあるということになっても、ゼロから有料化に持っていくには大きなハードルがあるでしょうね。

なんとか、回収のルートを確立して、確実に処理してリサイクルの枠組みに入れることが将来に向けての大きな課題になるのではないでしょうか?何時までも、埋め立て処分を続けていては、いずれ環境に何らかの影響を及ぼすことも考えられます。

もうひとつは蛍光灯そのものの形状や仕様の多様化への対応です。インテリアという意識の高まりやライフスタイルの変化から、以前とは全く違う形状の蛍光灯が増えています。直管に加えて、家庭やエレベーターで使用されている丸管、丸い電球タイプ、さらにはPCやテレビの液晶画面のバックライトに使われている蛍光灯なども徐々にではありますが、私どものリサイクル工場に搬入されるようになってきました。

ご覧いただいたように、私どものシステムは完全自動のシステムです。機械を効率よく動かすには、同じ形状のものを大量に処理するのが理想です。ただ、製品の形状がどんどん多様なものになってくると、作業に関わる時間とコストがかさみます。こういった問題を解消するには、新製品を製造する段階において、その製品が使命を終えてリサイクルに組み込まれる次のステップも想定し、デザイン・製造されるようになると良いと思います。

現在、扱っている直管の中に、地震などに備えて蛍光灯の表面をプラスチックで被覆しているものがあります。病院や地下鉄、駅などの照明がそうした非常事態時にガラスが飛び散らないようにする配慮は素晴らしいと思いますが、リサイクルの現場では、このプラスチック被覆を機械で除去するのが難しく、一本ずつ作業員がカッターで外しています。人手での作業は、効率化に限界がありますので、その分リサイクル処理コストが高くなります。製造段階で、リサイクル処理するときに自動除去できる蛍光灯の被覆ができれば効率的なリサイクルが可能になります。
   
 
分別回収された口金部分のアルミ
病院などで使用されている表面被覆された蛍光灯
   
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