編集部:食というシーンの先端を走っているフランスの動きが三國さんを突き動かした、ということですか?
三國:フランスはある意味、“食”という切り口での世界全体の動きが見える位置にある。2006年には食料自給率が122%に達し、世界有数の食料輸出国、しかも最も美味しいものが世界から集まってくる最上のステージだ。僕はその国の料理人たちが何を考えて、どんな料理をつくり、どんな活動をしているか? に、常にアンテナを張ってきた。
ところで“スローフード運動”については知っているよね?
編集部:その地方の伝統料理を継承し、生産者を守り、その味を未来に伝える。この三つが運動の柱、「地産地消」の考え方をベースにする運動だと理解しています。
三國:その通り。まず、その土地に伝わってきた伝統の味を守り、その料理の“レシピ”と“技術”を受け継ぐこと。次にその土地が生み出す貴重で稀少な食材を生産者が継続して生産できるように食材を買い上げ、消費するシステムを作ること。そして最後に“その味を知っている人”を育成すること。“スローフード運動”、この気長で着実な感覚が、僕にはすごく響いたんだ、特に3つ目のところがね。