宇津木浩一さん


カエルが警告を発している

メーターの目盛りがゼロをさしたら回収完了。右下の小窓に液体フロンが見える
回収業をつづける傍ら、宇津木さんは一つの実験を試みています。「カエルの白い卵をみつけたとき、南半球だけでなく日本の上空にもオゾン層破壊が進んでいると直観しました」という宇津木さん。オゾン層破壊の実態を調査するため、99年より地元近辺でカエルの卵の孵化率を調査しているのです。

<実 験>
使用するのは手作りの装置。カエルの卵を入れるために水深を一定に保ったカゴに以下の3種類の装置を用意します。

1. UV-Bを30%カットするフィルムで蔽う
2. UV-Bを15%カットするフィルムで蔽う
3. フィルムをかけない。


※ UV-Bとは、紫外線Bのこと。これは、カエルの卵細胞内にある遺伝子の本体デオキシリボ核酸のらせん構造を変形させます。

1.2.3.に降り注ぐ太陽光の照射条件が同じになるように調整し、それぞれに同じカエルの卵を入れておたまじゃくしになったときの孵化率を調べました。200個ずつ卵を入れたところ、2週間後の結果は?(1999年の調査結果)

1. 193個 97%
2. 197個 98.5%
3. 149個 74.5%

つまり、フィルムつきの装置の方が圧倒的に孵化率が高いわけです。宇津木さんのこのデータは、オレゴン州立大学が発表した実験結果とほぼ同じ傾向を示しているそうです。

爽やかな印象の宇津木さん。
翌年、ヒルやアメンボに卵が食べられてしまうというアクシデントに見舞われながら、やはり貴重なデータが得られました。(2000年の調査結果)

1. 133個中 33.8%孵化
2. 108個中 33.3%孵化
3. 133個中 16.2%孵化

これらのデータは、つまり、日本の上空でも紫外線Bが猛威を振るっていることを示しているのではないでしょうか?! 宇津木さんの実験結果は、わたしたちの日常生活に直結します。カエルは身を呈して、わたしたちに環境の変化を警告してくれているのです。そのサインを見逃してしまってはいけないのだと思います。宇津木さんは今年も実験を続けているそうです。ぜひ、この結果を伺い、このサイトでも報告させていただきたいと考えています。


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