編集部 倉田さんと鉄との出会いを伺えますか?
倉田 鉄に特別な関心があったというより、家業が西洋鍛冶だったこともあり、小さなころから鉄がいつも身近に転がっていました。鉄を曲げたり、ねじったりしてさまざまなモノを作っているのを当然のこととして見ながら育って来ましたから、僕にとっては、鉄は自由に思い描いた形状を作り上げる上で、非常に柔軟で都合のいい材料、まるで粘土のような印象があります。
編集部 倉田さんにとっては鉄が粘土のような素材なんですか?
倉田 そうですよ、まさに粘土ですね。作りながら、"これじゃダメだ"と感じたら、素材を無駄にすることなく、もうちょっと曲げたり、切り直したり、繋げたり、捻じったり、自由に軌道修正できるじゃないですか。僕は自分の技術力を示すためモノ作りをするのではなく、"作りたいもの"がまずあり、それを具現化するための技術の習得するタイプです。ですから、溶接の免許取得は、鉄での造形を初めたころではなく、ちょっと後になってからでした。 つまり僕は必然性が見えた時、それを徹底的極めたいと思うんです。そんな僕の制作スタイルにとって、鉄は感覚的にもフィットする素材なんです。