ecobeing logo

株式会社アグリコンパス 代表取締役社長 森下司さんインタビュー

 

編集部:日本古来の伝統的な食文化とは別に、多様化したライフスタイルがもたらす食へのニーズ、これからの日本の農業はどのように変化していくとお考えですか?

森下:マーケットを見て、お客様のニーズを満たそうと知恵を絞り、最善の生産及び販売活動をする生産者が報われる環境にならなければなりません。つまり、ごく普通の業界に見られる一般的なビジネスと同等のステータスで語られる仕事に変わっていく必要があります。 今回、改めて「農業」現場で一所懸命(ひとところに命をかけて)働く方々にお目にかかるチャンスがありました。何よりも印象的だったのは、立派な農業経営者の皆さんは実によく勉強している。そして、日本の農業について深く考えていらっしゃる、その事実に感銘を受けました。我々会社員には定期的な報酬も休日もありますし、日々の気象変化にもそんな敏感になる必要はありません。ただ、“農”を生業とされている農業経営者は365日フル稼働、24時間ノンストップでの農業経営を実行している。様々な事態を想定しての対策を講じることで、収穫までのプログラムを設計していると言っていいでしょう。それでも一夜にして、手塩をかけてきた農作物が自然の猛威の下で全滅してしまうこともあるのです。粘り強い精神力と目の前の現実への処方箋を即座に書ける決断力がないと遂行できないハードな仕事です。だからこそ、農業経営者が報われる環境が必要です。この状況に接し、農業をビジネスとして育てていくには、より専門的なサポート体制の必要性を痛感しています。

編集部:農業というシーンをビジネスとして成立させるためのサポートとはどのようなものだと思われますか?

森下:まずは「食」を取り巻く情報が正しく行き交う環境づくりをすることは大きなサポートになると思います。生産者と消費者間需給の見極めによる出荷先の調整や、流通・販売現場でのトレンドの推移、消費者・マーケットに望まれる適切なサイズや重量を考えた商品づくり、マーケティングセンスも取り入れたデータ分析をすることで、「農業」というビジネスが、社会が求める共通の“解”に向かうのではないかと考えています。

これは個人的な意見ですが、「食」というシーンには実に貴重な民族としての財産が埋蔵されていると思うんです。四季折々の食材の変化、そして個別の調理法と保存法、さらには全国に伝承される種まきや収穫に関するさまざまな祭りに込められた人々の感謝、これはまさに「農」が“いのちをいただく「食」”という、人間が生活することそのものだからこそ、過去から現在まで綿々と受け継がれてきたものだと思うんです。そんな仕事をさせてもらっている私たちですから、この仕事を通じて、頑張っている生産者や流通業者の支えになりたいと願っています。

編集部:「食育」が言われる以前にまず、「たべもの」に感謝する。それを作ってくれている様々な力に想いをやることが重要ということでしょうか?

森下:我々はそこまで大それたことを提言しようとはしていません。ただ、「農」をより魅力的ビジネスシーンとしてサポートすることが、ひいては日本の「食」という場面を健全に発展させるのではないかと考えています。

2010年3月5日 株式会社アグリコンパス本社にてインタビュー
www.agricompass.co.jp

イラスト

 

back パート1