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工学博士 松本光一郎さんインタビュー

 

工学博士 松本光一郎さん

編集部:海と陸とは領有に関する考え方や管理が違うと思いますが、海洋上におけるゴミの排出については何らかのレギュレーションがあるのですか?

松本:現時点で申し上げると、海洋における汚染物排出についての国際法は、基本的に国際海事機構(IMO)という国際機関で取り決めをしております。オイルについての排出規制はすでに決められたものがあり、NOXなどの排ガス規制もすでに出来上がっています。また、無積載の貨物船はバラスト水と呼ばれる海水をタンクに入れ、船体を沈めながら航行します。港に着いて物資を積載する際に重しとして積んでいたバラスト水を排出するのですが、採取したバラスト水は捨てる場所とは違う質の海水ですから、生態系を壊してしまう可能性があるのです。そのためのバラスト水の排出規制というものも存在します。

編集部:なるほど。私たちは海に囲まれた島国に住んでいながら、意外にも「造船」や「海洋」についての知識やルールなど、実は知らないことがすごく多いことが分かります。私たちが普段もっともよく使用する交通手段の一つである「自動車」においては近年ますます地球環境へ配慮されたモノづくりや利用が求められています。船についての省エネ、つまりCO2の削減といった環境技術の現状についてはいかがですか?

メッセージ

松本:当然、造船の分野においてもCO2を減らすための技術開発は進めています。ただ、レギュレーションという面で申し上げると、国際航海は国をまたがるものですから、国単位の規制は難しいのが実情です。現に「京都議定書」からは国際航行船に関する排出規制は外されています。今後の具体的数値による規制は国連やIMOなどで、今まさに議論がなされている段階です。ただ、運輸分野の比較で言いますと、船舶によるCO2排出比率というのは全運輸分野の3%くらいで、エネルギー効率がたいへん良い輸送手段であるということは是非認知していただきたいと思います。もちろん、3%といっても絶対量としては膨大な量ですから、削減努力は今後も一層真剣に取り組んでいかなければなりません。

 

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