編集部:先生のお話を伺っていると、持続可能な社会の基盤として、「経済」と「環境」というそれぞれ自立した二つの大きく複雑な流れを両立させるには、多層的な思考の下、“価値のある資源”の所在を突き止め、そのひとつひとつを丁寧に対処する姿勢に重要性を感じます。
細田:そうです。まさにそれが基本となる姿勢です。まず世の中がどういう方向に向かっているのか? 国が進めている具体的な制度設計や資源相場がどうなっているのか?など、現実を大局的に見極めることは非常に重要です。 資源に関して言えば、多くの天然資源が徐々にピークアウトしていることは明らかですし、長期的に言えば価格は全てが上昇してゆくと考えて間違いないでしょう。そのとき、循環資源となる「玉」をいかに集めるか?ここがビジネスのポイントになるでしょう。環境ビジネスやグリーンビジネスの質も幅も大幅に変化し、そこに成功例が出てくると、ビジネスシーンのクオリティーのばらつきが徐々になくなり、全体的なボトムアップ、つまりビジネスのクオリティーが上がってきます。動脈経済はどんどん大規模化し、それによってコストは下がり、技術は革新的に飛躍を果たしてきたことはご承知の通りです。それと同じことが静脈経済のシーンでも徐々に起きつつあるのです。業界全体の質が徐々に、そして確実に上がってきているでしょうね。
編集部:永年にわたり環境問題は静脈産業であり、最低限のことをやっていればそれで良いというレベルの認識が大勢だったのが、近年圧倒的に変わってきていることを実感します。ただ、いまだにそのためのシステム作りの必要性に気付いていない人の多さにギャップを感じます。このギャップを埋めるための標語が“sustainability”、「持続可能性」などだと思うのですが、それだけではなかなか納得しにくいのも一般的な思いだと思います。その理由の一つには、自分がお金を出して手に入れたモノがその役割を終えた後、資源価値があるから循環させようと言って、見知らぬ誰かが不当に儲けていることに対する猜疑心のようなものが何処かにあるのではないでしょうか?
細田: おっしゃることはよく分かります。その問題提起に対する答えのひとつには「見える化」と言われるもので対応すべきではないかと思います。モノの流れ、経済システムを文字通り透明化することでインチキではなくビジネスにする。たとえばリサイクルには然るべき適切な技術があり、その工程とはどのようなものであり、そのシステムを有効に機能させるための報酬設定は必然性があることを明確にし、コミュニティーが騙されているような感覚を排除しなければいけないでしょう。透明化することが企業にとってのプレミアムであり、そういう風に社会全体を持っていかなければいけません。