ecobeing logo

細田衛士さんインタビュー

 

編集部:いま「モノの性質」という言葉が出てきましたが、モノには、携帯電話のようにその固有のモノに対する愛着(所有欲)が湧きやすいものと、オフィスのコピー機などのように機能だけが使えればいいといったような性質のモノがあり、愛着の湧くモノのリサイクルはなかなか一元的なシステムを構築するだけでは難しいとも思うのですが、その点はいかがお考えでしょうか?

細田:これだけモノが多い時代ですから、アイテムをある程度その使われ方、回収(物流)における方法で、類型別に分類し、緻密に交通整理をしていく必要があるでしょうね。資源循環を円滑に進める一つの方法は、いかに企業がモノの流れをエンクローズ(囲い込み)して、管理を可能にするかということです。たとえばモノの性質を、「カスタマイズされるモノ」と「されないモノ」という観点で二分するならば、消費者によってカスタマイズされてしまうモノは、資源循環の仕組みから見れば企業にとって非常にエンクローズしにくい、管理しにくいモノと言えます。逆に、機能だけが使われ、カスタマイズされにくいモノに対して、企業は比較的容易にエンクローズができます。たとえばオフィス機器のような製品は、製造から回収までがシステムとしてエンクローズしやすく、すでに多くのビジネスモデルができています。企業が徹底的に自己管理できるからこそ、サービスサイジングなども成り立つわけです。たとえばエアコンの温度調節(空調管理)も個人にやらせるより、電力会社が管理した方がCO2を削減できるという実験結果もあります。カスタマイズしなくて良いものは、ユーザーとの間に新たなビジネスモデルを作ることで、囲い込みができるというわけです。

コピー機などのオフィス機器は早い時期から厳格なエンクローズドシステムができていましたが、これは当初から環境対策が主であったわけではありません。もちろん製品に含まれる有害物質等の管理もできていましたが、もともとは製品の横流しを防ぐ目的がメインでした。しかし、不要になって機器が排出されるタイミングの違うものを回収する行為は大変難しいものだったそうです。そこで同業他社が一緒になって、センターとなる場所まで回収を一緒に行い、コストを下げることに成功したそうです。

また、面白いことは時代の流れによって、アイテムの性質は変わる、ということです。たとえば自動車を例に挙げれば、一昔前の若者であればアルバイトを一生懸命してでも自動車を欲しがり、非常に大切にしたものですが、現在の若い人は決してそうではなく、使う時にレンタルすれば駐車場代も払う必要ないし充分だと思っている人も少なくありません。そうなってくると自動車は徐々にカスタマイズされないモノへ性質が変わってくるわけです。ところが、企業とユーザーとの間には、レンタルというビジネスの輪が、新たな閉じた関係として出来上がる。また、カスタマイズされるモノはどうなのか。これはなるべく長期間使わせることがポイントとなり、そこにはメンテナンスビジネスという資源循環とは別の企業とモノと消費者とのクローズした関係が成り立つのです。そのようにして、結果的に、環境への配慮という社会的な要請と経済的な折り合いがつくシステムがアイテムの性質によって築かれていくわけです。

細田衛士

 

back