編集部:コピー機の回収管理システムの目的が最初につくったプラットフォームの目的から時代に応じて変移していったというのは非常に面白いですね。
細田:そうですね。時代の要求によって企業の事業目的は変移をしていきますし、目的に応じて技術やサービスの応用がさまざまなところで起こっています。たとえば、DOWAグループという企業があるのですが、同社は近年リサイクル事業で力をつけています。DOWAさんには小坂製錬(所在:秋田県)という事業がありました。小坂鉱山から採掘される鉱石は複雑鉱と言いまして、有価金属を色々と含んでいるのですが、不純物も多く個別に金属を抽出しづらいことで有名でした。しかし、この複雑な鉱石を扱うことで小坂製錬が習得した技術を産業廃棄物処理へのノウハウとして活用し、いわゆる都市鉱山におけるリサイクル事業を飛躍的に成長させたのです。製錬技術とリサイクルへの技術は変わりませんが、対象となる中身が変わっていったのは非常に面白い実例だと思います。
編集部:今までのお話の中で、B to CとB to B、両方のケースにおける仕組みの事例が上がりましたが、環境問題に対するさまざまな取り組みの成果が出るには、企業と個人の意識と行動が両立しなければいけないように感じています。たとえばCO2の削減問題にしても、いくら低燃費のCO2排出量が少ない自動車が開発されても、景気対策として実施された週末の高速道路料金の引き下げの結果、自動車の利用が頻繁になり、その結果、予想されていたCO2排出量が削減目標に至ることができなくなるかもしれないという事態も大いに考えられます。つまり、環境負荷の低い商品を企業が開発しても、市民のひとりひとりも社会全体の潮流を理解し、それに歩調を合わせていかなければ、大局的な効果を出すことは不可能でしょう。その逆に市民がコツコツ努力をしても、エネルギーの大量消費をする企業がその努力を怠ったら、同じく大きな成果を望めない。環境問題とは、常に全体を見渡す視線とバランスが求められるのですね。
細田:おっしゃる通りですね。個体の政策を実施した場合の“副作用”というのは常に慎重に考えなければいけません。多層的な問題を解決するには、「合わせ技」で行くしかないと私は考えています。いま話題に上がった自動車について言えば、低燃費の車への乗り換えを促進すると同時に、必要以上に走らせ過ぎないような政策、たとえばモーダルシフトや環境税などを整備しなければいけないでしょう。いっぺんに二つの目的がある二つの政策を立てるという総合力が求められます。ただ、縦割りスタイルの日本社会はそのような包括的な政策を立てるのがちょっと苦手な傾向がありますね。