編集部:まず、細田先生が現在進めていらっしゃる「環境経済」という研究内容について簡単にお話をいただけますか?
細田:環境問題の中でも、「資源循環」、つまり資源が採掘され廃棄されるまでモノが社会の中でどれくらいうまく回って、付加価値をつけていくのか、それによって環境負荷が少なく経済が発展するためにはどのような制度が必要なのだろうか、というテーマが基本的な内容です。「環境経済理論」に基づいて解析をし、その上で、政策提言をするための制度分析などを行い、実証的かつ定量的な統計解析をするというのが主な流れです。もう少し具体的に申し上げますと、世の中が資源循環社会へ向かいつつある現在、従来のように企業は単に、良質な“モノ”を安く売るというだけでは継続的な発展ができなくなっているというのが現状です。現代という時代における商品価値とは商品そのものだけではなく、環境にも配慮されている“モノ”を売ることが、企業のプレミアム(付加価値)として評価されるのです。
その逆に環境への配慮がされていないモノをマーケットに送り出すことはその企業にとってリスクにもなり得るのです。コンプライアンスが徹底されない企業活動が現行法において抵触していなかったとしても社会的な評価を下げる可能性が高い社会において、どのような検証や思考があれば企業活動がプレミアムとして評価され、その反対にリスクに陥ってしまうのかといった状況分析を最近の編著『資源循環型社会のリスクとプレミアム』という中で行いました。
また、単著の『資源循環型社会 ― 制度設計と政策展望』では経済理論を基礎として、制度分析を行い、さまざまなアイテムを取り上げて、どのような方向で資源循環が進んでいるか、また、我々人間の行動規範となるハードローからソフトローまでにいたるレジーム(=人間の行動枠組み)が、どのように資源循環を規定しつつあるかということをテーマにいたしました。
編集部:前回のエコピープルで、私たちは都市鉱山を研究されている原田幸明先生(独立行政法人 物質・材料研究機構)から、「携帯電話」のリサイクルの実情と問題点、その意義についてのお話を伺いました。その中で、原田先生は「携帯電話」のリサイクルは、都市鉱山における象徴的な例であるが、“携帯電話のリサイクル”という身近な事例を取り上げることによって一般の関心を喚起し、社会全体の意識をもっと大きなコンセンサス作りへと変えていくことも重要な効用であるとおっしゃっていらっしゃいました。この「携帯電話」のリサイクル、細田先生はどのようにお考えですか?
細田:原田先生がお話をされた携帯電話のリサイクルについては、私も少し研究したことがあります。「携帯電話」をリサイクルするために実効性のある法律というのは現時点ではなく、資源有効利用促進法の中のアイテムとしても記載はされていません。つまり、我々のレジームの中から抜け落ちてしまっているのが実情です。