地球にとってサンゴはどんな役割を果たしているのでしょうか?
それは「なぜサンゴが大切なのか?」という質問ですね。一般の方々にとっては「サンゴは見ていてキレイだから大切にしよう」というような感覚だと思いますが、実はそんな単純な問題ではないのです。サンゴが海にとって、そして地球にとって非常に大切な存在である理由は大きくふたつあります。まず一つ目は海の生態系全体を支えるエネルギー生産者であるということ!
ご承知のように、水中における食物連鎖の最小単位は光合成をする植物とサンゴです。海全体には小さな植物プランクトンが広く薄く生息していますが、水深100メートルくらいまでが生息の限界です。いっぽう水深20メートルくらいまでの浅い海域には植物(岩場には海藻、砂地には海草)やサンゴが密に育っています。熱帯や亜熱帯に多いのがサンゴで、温帯に多いのが海藻です。海藻もサンゴもそれぞれが海の全生物を支える基礎生産者として、その存在自体が非常に重要なのです。
二つ目の理由は、サンゴは地形を形成しているという事実です。さきほど申し上げたように、死んだサンゴや生きたサンゴが折れて瓦礫状になって堆積してできた石灰石の地形がサンゴ礁です。島の周囲にできたサンゴ礁は防波堤の役割をしていますが、サンゴ礁の上面に生きたサンゴが密に生息していれば、台風などで破壊されてもサンゴがそこを修復します。また生きたサンゴが密にあることで、島の沈降(*1)を防ぐ役割を果たしているのです。ミクロネシアのエニウェトック環礁では、2本のボーリングをして、1,267メートルと1,405メートル掘ってやっと玄武岩の岩盤にたどりついたそうです。大体一年に0.03〜0.1ミリメートルぐらい沈下しているという計算でしたが、これをサンゴが上に育つことで海面上に島を残していることになります。日本では沖ノ鳥島がこの状態です。実際に90メートルほど掘っても石灰岩です。おそらく1,200〜1,300メートルはサンゴが作った石灰岩だろうと想像されています。
注釈(*1)…地球の表面は複数枚の岩板(プレート)で構成され、それぞれのプレートがマントルの対流に乗り、動いているというプレートテクトニクス(plate tectonics)に基づき、沈降していく島があると言われている。島の沈降とサンゴ礁の関係についてはダーウィンによる「沈降説」が有名。