DMEは炭素と結合しない組成を持ち、燃焼しても黒煙が全く発生しません。また、酸性雨の原因にも硫黄酸化物(SOx)も発生しない環境負荷の極めて小さいクリーンエネルギーです。毒性が無い上に、ハンドリングが容易なその特性から、発電用燃料を始め、輸送用燃料、一般の生活シーンでのエネルギー、さらには化学原料など幅広い利用が可能なエネルギーなのです。

地球環境への負荷を可能な限り低減し、様々な材料から精製できる資源の有効活用化は重要な課題です。LCAの観点からも多大な投資をせず、分散されたエネルギーを適切なコストでハンドリングできるその特性は、21世紀の時代が求めるニーズにあったエネルギーと言えるはずです

●詳細情報 JFE環境ソリューションサイト DMEページ

編集部:
自動車燃料としてのDMEはどの程度まで整備が進んでいるのか伺えますか?







林:
最近数多くのメディアからのDMEは取材を受けるようになりました。その理由は、何としても地球環境への関心が大変高まってきたこと、そしてエネルギー全体へのヴィジョンを真剣に考える時期に差し掛かってきたという背景があると考えます。

自動車燃料としてのエネルギーにテーマに絞る前に、まず総論としてのDMEの特性を整理すると、天然ガスや石炭などのエネルギー資源に比べて、非常に扱いやすいエネルギーであること。そしてエネルギーの安全供給という面から見て、世界中、特に中東やインドネシアなどに、まだ未開発のまま埋蔵されている原料が潤沢にあることです。

DMEはさまざまな原料から製造可能なエネルギーですが、私たちがまず想定しているのは、中小の天然ガス田から採取した原料を効率のいいDMEに換え、輸送をするという方法です。このシステムが実現できれば、LCAの観点からもまさに"環境負荷の低い、環境に優しいエネルギー"であることを立証できると思います。

ただ、日本の現状が"エネルギー問題を深刻に受けとめているか?"というと、まだそういう状況にない段階です。一般のユーザーにとって、ガソリンや天然ガス等を使っている上での不便をあまり実感していないということもあり、DMEの真価がなかなか理解されないという状況です。つまり、現状から一歩踏み出し、さらに先進的な環境に適したエネルギーへとシフトしていこうというところまでには来ていないのです。

軽油ディーゼルにしても既に軽油があったから使われているのであって、DMEディーゼルに変えた方がもっといいことは、分かっていてもそこまで踏み込めないという状況ではないかと考察しています。

DMEプロジェクトの進渉状況として、精製プラントの操業、公道でのDMEトラックの走行、つくば〜新潟〜横浜の長距離走行実証試験等、(それぞれにプレスリリースにリンク)インフラ整備も着実に進んでいます。今後は、私たちもこの新しい技術の紹介にあたり、21世紀のエネルギー問題を社会全体として考えるトータル・ヴィジョンをより明確に伝える必要があると痛感しています。言うまでもなく、DMEはこの問題への有効な回答のひとつなのです。

ここでは自動車エネルギーをテーマとしていますが、DMEは発電、家庭用のコジェネ発電機、そして確実にやってくるだろう未来の水素エネルギーへの架け橋としても、その使命を果たす優れたエネルギーです。DMEからの水素の抽出は実に簡単なプロセスで可能なのです。

私たちの課題は、未来に向ってのエネルギー・ヴィジョンを正確に発信することと、効率よく、より安定した価格でDMEを日本に運び、その品質を変えることなく各分野に供給するシステムを整備することだと思います。DMEが一般の方々に安心して使っていただけるようになって初めて、その特性である環境負荷の低さや熱効率の良さが立証されるわけです。そのために一般の方々にDMEの情報をトータルで伝えることにもっと注力したいと考えています。