FILE-007
先生、リサイクルが環境に
悪いって本当ですか!?
武田邦彦さん
芝浦工業大学工学部材料工学科教授・学長事務代理


PAGE3
■リサイクルが環境に悪い理由(3)


――一でも、リサイクルしなければゴミが増えるばかりではないでしょうか?

今、日本人口1億3000万人で年間20億トンの工業原料(石油・石炭・鉄鉱石など)を使っています。日本を一つの家庭だと思ってください。テレビを買ったとしましょう。ちゃんと使っても設計寿命の10年が過ぎれば、そのテレビは家庭から出て行くわけです。空中で消えてしまわない限り。つまり、毎年20億トンのものが入れば、必ず20億トン出て行かなくてはならないのです。そうでないと日本の中はゴミ箱です。「ゴミを減らそう」なんて変な話があります。ゴミは減らすのではないんですよ。入り口を減らさなくちゃいけないんです。買うのを減らすならわかる。買うのを減らせばゴミは減る。買う量は同じなのにゴミだけ減らそうなんて、矛盾しているでしょう。これが、三つ目の問題点です。

現在の日本は年間20億トンの物質が入って来ているのに、恐ろしいことにゴミは5億トンしかないのです。15億トンは今、日本の中にたまっているんです。みんなで盥回しにしていたり、路上に捨てたりしているわけです。つまり、日本がだんだん汚れてきているんですよ。なのに、5億トンのゴミが4億トンになったって喜んだりしてね(苦笑)。政府の経済政策によって、入ってくる量はむしろ増える傾向にあります。出る方だけしぼってどうするんですかね。

私が言いたいのは、「買う方を少なく」ということなんです。自分が買ったのであれば、買っただけ廃棄物が出ても仕方がないですよね。「廃棄物を捨ててはいけない」という前に、「買ってはいけない」といわなくてはいけないのです。

でも、「買ってはいけない」とはいいにくい。企業がつぶれてしまうから。そして企業をつぶさずに環境を守るためのウソが横行しています。「どんどん買ってください。捨てなくていいですよ。真中にためておきましょう」と。それこそが、環境問題んですよ。

今、環境をめぐる問題としては、資源枯渇、環境悪化、廃棄物貯蔵庫という三つがあります。これは、われわれ日本人の矛盾した心をそのまま表しています。「たくさん買いたい」が資源の枯渇を招きます。「ゴミはためておこう」が環境を悪くする。

「ゴミ箱は作りたくない」が廃棄物貯蔵庫の問題を引き起こします。20億トンのものを買えば、20億トンのゴミ箱を作らなくてはならないんですよ。むしろゴミ箱を作ってから買わなくてはいけません。ところが、ゴミ箱を作るのは嫌だといい、リサイクルをすれば20億トンのゴミが減るというんです。リサイクルをするのが神様だったらそれでいいかもしれません。何もしなくても使い終わったテレビが元に戻る、といった具合に。けれども、残念ながらそうはいかない。リサイクルをすれば、むしろもっと費用や資源が消費されるわけです。矛盾だらけなのに、つじつまを合わせようと思って一生懸命やるから、事態はさらに悪くなってしまうんです。>>次のページ


PAGE1 / リサイクルが環境に悪い理由(1)
PAGE2 / リサイクルが環境に悪い理由(2)
PAGE3 / リサイクルが環境に悪い理由(3)
PAGE4 / ゴミをためておく「人工鉱山」
PAGE5 / みんなで生きる社会へ