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■リサイクルが環境に悪い理由(2)
――では、二つ目の問題点をお教えください。
二つ目は、物は使うと悪くなるという材料工学の原理がある、ということです。つまり、劣化です。例えば、プラスチックのバケツを買います。新品のバケツはしなやかでいいですよね。ところが、1年も外に放置しておくとパリパリになって、水を入れるとバリンと割れてしまいます。必ずそうなる。もちろん、将来はそうならない材料も出てくるかもしれない(武田教授は、通常の4〜6倍の寿命をもつ長寿命プラスチックを開発された)。
ただ、今は技術がない。技術がないから、リサイクルで折角集めても、劣化した物質をもう一度使うことはできないのです。学問的に言えば、分別した物質は劣化という点から見ても、資源ではないのです。特にプラスチック、セラミックなどは再使用できない。使えるとすれば金属だけ。そういう意味でも、リサイクルできるのは、先ほど挙げた鉄と銅なんです。
でも、昔の浴衣なんかは「リサイクル」していましたよね。お母さんが浴衣を着る、娘さんなんかがまた着る。そのあとは傷んできたから雑巾にでもして、最後は捨てましょうか、と。そうすると、2、3回使ったことになる。この例から、布もリサイクルできるではないか、という質問があるかもしれません。しかし、それは個人だから可能なリサイクルです。今、われわれが考えているリサイクルは、社会システムとしてのリサイクルです。
仮に、浴衣を資源ゴミとしてリサイクルに出したとします。繊維として集めると繊維に強弱が生じます。使用後の繊維ですから、弱いものが混じるのです。それらを強い繊維と弱い繊維に分けることはできません。弱い繊維が混ざってできた糸から弱い繊維だけを抜き出すことは不可能です。結局、その糸で織った布は弱いところから破れます。使えないのです。繊維だけに限らず、材料全体がそのように劣化のために製品に強弱を生じてしまうんです。
でも、「リサイクルできる」という錯覚が生まれたのは、物が古くなる前にみなさんが捨てるからですね。昔みたいに十分使ったら、まさかこれをリサイクルに出そうという気にはならないでしょう。ボロボロな洋服がもう一度洋服になるとは夢にも思わない。ところが、あまりに新しい服を捨てるものだから、もったいないと思ってリサイクルするんですね。
今年4月から施工される家電リサイクル法によって、テレビやエアコンなどの家庭電化製品をリサイクルしようとしていますね。例えば、テレビのキャビネットは、ふつう10年くらいは使えます。設計寿命が12年なんです。もし、このテレビを設計寿命の12年まで使ったら、どうしても捨てることになるでしょう。ところが、多くの人は5年くらいで捨てる。だから、もう一回使えないかなと思ってしまう。でも、劣化していますから、もう一度成形して使うことはできない。テレビのチャンネルも、残念ながら使えないのです。
現在、設計寿命が10年の商品を10年使う消費者がほとんどいません。買ってから3年、2年でも捨てるでしょう? 必然的に家庭電化製品のゴミは増えつづけています。だから、リサイクルしようというわけですね。でも、実はもったいないことをしながら、さらにもったいないことをしているんですよ。大元を変えなくてはなりません。12年使えるものを6年で捨てる。でも、リサイクルすればいい、という消費生活は資源を守るという目標から逆方向に進んでいます。6年で捨てようとしていたものを12年使えばいい。もしくは18年くらい使えば、ゴミは現在の3分の1になるでしょう。>>次のページ
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