編集部:自動車産業と鉄鋼、このふたつの業界は日本経済の牽引役として大きな役割を果たしてきましたが、今後このふたつはどのような関係になっていくとお考えですか?
細谷:まず、ふたつの統計をご覧いただき、“これをどう読み解くか”から議論を始めませんか?
産業の未来の発展を分析するには、まずその発展の過程を振り返り、流れにおいて現在がどのような位置にあるかを把握し、理解することが重要であると私は常々考えています。
これは日本の自動車生産台数の推移(日本自動車工業会編/日本の自動車工業1966-2008作成)をまとめた統計です。統計が初めてとられた1965年の自動車生産は、ほぼ全てが日本国内の需要に対応するための生産でした。それが毎年、国内生産は着実に伸び続け、内需のみならず外需をもまかなえる規模となり、1980年には日本国内で生産される自動車生産台数は1,100万台を突破。そしてまもなく内需とほぼ同数の自動車が海外に輸出されるまでに発展します。その後、日本の自動車産業は生産拠点を海外に移し、海外生産を主流とするビジネスへと変貌してゆくことになるのです。2008年、2,300万台の日本ブランドの自動車が生産されていますが、メイド・イン・ジャパンはそのうち1,200万台前後。つまり、日本の自動車産業はこの25年の間に約2倍にその生産量を増やし、世界に向けて市場を拡大しましたが、我々鉄鋼業は1985年の時点で、その成長スピードとスケールという点において彼らと袂を分かつことになったのです。