「1枚の菜っ葉でも全力を尽くして料理をしなさい」という道元の思想をご存知ですか? つまり質素な食材の菜っ葉でもそれが出来るまでの来歴を考え、自分はこれを食べるに値する人間か考え、食べなさいということです。菜っ葉の来歴を実際に想像してみてください。「これは私が作りました」、という生産者は存在するかもしれませんが、その人だけの力で菜っ葉はできたわけじゃない。蒔いた種が育つという現象は、土、水、酸素や太陽、色々な要因が合わせて成り立っているということを考えることです。1枚の菜っ葉が育つという自然現象と南極で起きている厳しい自然現象、そこに違いはあるでしょうか? 僕にはその全てが尊いものに思えてならないのです。
-立松和平
この言葉は昨秋、取材をさせていただいた作家の立松和平さんが私たちに語りかけてくださった言葉です。立松さんが教えて下さったのは、私たち人間がさまざまな技や知識を習得しても、決して驕ることなく、この地球という限られた環境で生きていくために、“慎ましく生きる”という考え方でした。“慎ましく生きる”というのは、我慢をすることでも節制することでもないはずです。生物にとって望ましい環境をこれからも持続していくには、“自分は何者であるか?”、“生きるために必要なこととは?”を考えていく必要がありそうです。
2010年春号のエコピープルでは、私たちが生きる上でもっとも身近で、重要な行為のひとつ、「食べること」を通して、私たちが生きていくための本質について考えてみたいと思います。
生産、流通、そして消費、目の前の現実に向き合い、さまざまなお立場から確かなアクションを起こしている方々をご紹介します。