川崎アゼリア2006-2008:第3章

 

温室効果ガスの排出低減以外の場面で、導入効果はございますか?

JFEエンジニアリング 西村さん

西村 先ほど、今回の川崎アゼリアの取り組みは環境省のモデル事業に認定されているとお話しましたが、つまり、まだまだその段階であるということを意味します。ただ、こうして既存のシステムを丁寧に検証し、生かすところは生かし、入れ替えるべき設備については現状のスペースを最大限に引き出すレイアウトを模索し、実現化できたことから、この改修工事に参画できたことに誇りを持っています。
温室効果ガスの発生抑制という目標に対して、私たちが打った手は、お話したとおり、水和物スラリ蓄熱システムの導入だけではありません。効果的なさまざまな技術、アプローチを組み合わせて、川崎アゼリアのエネルギー消費形態にとって最適のプログラムを提案し、それが実行され、確実に成果を発揮しているというのが現在の状況です。

 

つまりそれぞれの施設にとって解はひとつではないということでしょうか?

西村 そうです。地下街と言っても、日本全国を見渡しただけでもさまざまな条件があります。規模も、年間の平均気温、既存設備の状況、それぞれ全く異なると言っていいでしょう。まずは、丁寧に実情を検証し、お客様のご要望を聞き、ランニングコストやその後のオペレーションが円滑に進むプランをトータルで提案していくシステムこそが本当の意味で現代のエコなシステムなのでしょう。ここアゼリアの改修で採用されたプランは7つの異なる技術が結集したものです。

省エネルギー対策

これらの技術をアゼリアの規模と既存設備、そして目的に沿って、さまざまな方法で組み合わせることで初めて、成果がもたらされるのです。このプログラムがそのまま、他の施設にすぐ流用できるわけではないのです。その意味でも、私たちは改修工事を終えた今も、本来の目標を確実に達成しているか否かをモニタリングし、今後のケースに活用できるデータの収集を継続しているわけです。

 

今や日本は、世界に誇れる環境技術力を保有する国になったという定評がありますが、そのポイントはここにもありそうですね。設備の導入だけでなく、実際に稼働しているシーンに寄り添って、“こと”を見守るというレベルにまで到達しつつあるとも言えそうですね。

西村 永年にわたり環境関連のプロジェクトに関わる中で、私たちの仕事の仕方もシーンも変わり、さらにマインドとしても変わって来たな〜としみじみ感じることがありますね。

 

それはどんな時に感じられますか?

アゼリア川崎 筒井さん/JFEエンジニアリング 西村さん

西村 一言で表現すれば、効果を生むには継続こそが最大の処方箋であり、それは“快適なエコ”でなければ いけないということです。つまり我慢や犠牲を強いる“エコ”ではなく、楽しく続けられるエコでなければ、成果がでないとういうことです。アゼリアの改修プロジェクトの実施中でも、既存のテナントさんや毎日ここを利用される市民の皆様にご迷惑や負荷をかけるようなプログラムでは、決行されなかったでしょう。

 

川崎航空写真

筒井 20年前の川崎駅前はこの東口のアゼリアしかショッピングモールはありませんでしたが、現在は西口にも新しいモールが建設されました。或る意味で、先輩のアゼリアは、川崎駅周辺の環境負荷を後輩に先立ってCO2削減に向けての対策をいち早く手を打ち、駅周辺地域へのヒートアイランド現象の抑制に一役買っているとも言えるかもしれません。これが、地域に対しての先導的事業として評価されているポイントでしょう。

 

快適=無理がない、持続性を期待できる、当たり前のことに聞こえますが、ここがその次の展開へ繋がるポイントになるのでしょうね。

西村 私たちの当面の課題は、冬季の対策です。現在、大きな開口から冷たい風が吹き込んでくるため、入口付近のテナントさんのお店は暖気がどうしても逃げて行くんです。この冷気対策についてはしっかりデータを集積し、より効果的な解決策を提案したいと思っています。

筒井 大いに期待していますよ!(笑)



(2008年11月26日 川崎・「川崎アゼリア」にてインタビュー取材)

*編集後記をecobeing ブログ「ecolog」に掲載しております! ぜひご覧ください!