川崎アゼリアに新空調設備が導入された経緯をお話頂けますか?
筒井 2004年3月に川崎市が地球温暖化対策地域推進計画をはじめました。川崎市はもともと環境意識の高い行政区域で、市民や事業者、学校、行政が「かわさき地球温暖化対策推進協議会」という組織を作り、それぞれの役割のもとに地球温暖化防止に取り組んでいます。その一環として「川崎都心部循環型街づくりモデル事業」というものが興り、環境省が推進する「環境と経済の好循環のまちモデル事業」に採択されました。その舞台となったのが川崎アゼリアでした。川崎アゼリアは、川崎市の都市開発事業の一環として、1987年に竣工されまして、延べ面積約56,000km2、現在はテナント数が約150店舗、一日に約30万人もの人々が利用する大型の公共商業施設です。毎日多くのお客さまに快適に過ごしていただくために、空調設備は膨大なものですし、オープンから20年が経ち、設備効率も落ちていました。また、省エネルギー法で定められた省エネ1%以上の低減を実現するためにも、空調設備の改善というのは必要な導入課題でした。
新空調設備の導入にあたりJFEエンジニアリングはどのような形で参画されたのですか?
西村 まず私たちとして取り組んだことは、空調に関する実態調査でした。川崎アゼリアは飲食、アパレル、物販など多業種がテナントとして出店されていますし、公共動線として年中多くの人たちに利用されています。各店舗やゾーンによって違う快適温度はどのくらいなのか、エネルギーは実際どの程度使用されているのか、などを試算し、どのようにしたら効率的なエネルギー使用になるかを立案しました。そして、改修工事の施工、新しい技術やシステムの導入、その成果の管理に至る「空調を中心としたエネルギーエンジニアリング」を行っています。
また、当事業が環境省からモデル事業として採択されたこともあり、3年間の報告義務が課せられています。空調管理のために導入した中央監視システムの中に、「BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)と呼ばれる機能がありますが、このシステムで、施設内の温度管理と設定、使用エネルギーの算出、排出ガスが規定値内であるかの管理などをし、履歴をとることで、報告のためのデータ集積と分析に役立てています。また、施設内の場所・店それぞれの快適温度を中央監視画面上ですべて管理できるところもBEMSのすごいところです。各空調機がどんな運転をしているのか、一台一台の運転状況をコントロールし、お客さまのお声にも応じながら設定温度を変えています。従来の空調システムですと、どうしても受身な空調管理しかできなかったのですが、より空調によるエネルギー消費傾向を把握しながらアクティブな対応ができるようになったと自負しています。より合理的に無駄をなくしていけるか、ということです。