「森の町内会」がスタートして4年目を迎えた現在、その成果についてどのようにお感じになっていますか?
直接的な成果としましては、初年度は6社でスタートしたサポーター企業も2008年度には60社に増え、間伐面積も年間1.8haから20haに広がりました。間伐材の出荷量と「間伐に寄与した紙」の使用量にして、47tから330tと約7倍の増加になります。これらの成果に対して、岩泉町としても本格的にこの事業への取り組みをしてくださるようになり、条令として「森の町内会」基金の創設が検討されるまでになりました。当基金では、間伐促進支援金の過分をプールし、不足時への対応に充てられます。「森の町内会」はより透明度の高い間伐促進のモデルとして進化したのではないかと思います。
岩泉町では間伐用大型重機の導入と間伐作業の効率化にも前向きです。「森の町内会」は、まだ若干ですが、林業の復活に刺激を与えるレベルに到達しつつあるとも思います。
また、これは当初想像が及んでいなかった成果と言えますが、次世代の子供たちに対しての教育の一環としての貢献が果たせつつあります。岩泉町の中学生が、東京への修学旅行に際し、「森の町内会」のサポーター企業を訪ねたということがありまして、企業側も快くコミュニケーションを取ってくださったのです。そんな経験を経て、岩泉の中学生が、「自分たちの町の間伐に、東京の企業が支援をし、間伐材が活用されていることを誇りと自信に思う。」という感想を残しています。若い世代からの反応というのは想像もしていなかったことで実に感動的でした。岩泉町の町長さんは予てから、「次の世代に残す具体的に見える仕組みを作りたい、見えるものを語りたい」とおっしゃっていましたが、まさに我々の「森の町内会」活動はそれにあたると町長さんが確信されるようにまでなりました。
「森の町内会」の今後の課題としてお考えになっていることはありますか?
今後の事務局としての在り方をどうするか、ということです。「森の町内会」活動は環境NPO「オフィス町内会」の社会貢献活動の一つとして運営をしており、それ単独で収益を上げる仕組みにはしていません。それが故に、順調に活動規模が拡大したことにより、事務局スタッフの作業量がオーバーフローしつつあることも事実です。
「森の町内会」にはサポーター企業の方々にとって、単独ではなかなか取り組みが難しくても複数企業で行う共同社会貢献活動だからこそ参加出来るという大きなメリットがあります。ですから、事務局の存在は必要不可欠ですし、だからこそ、事務局自体が継続のための経済性を維持できるように、パートナーである製紙メーカーと紙販売会社はもとより間伐サポーター企業も含めて、役割分担の新たなあり方を構築していかなければならない時期に来ていると考えています。
「森の町内会」が構築した仕組みが次の世代への教育題材のひとつになったということは、我々の活動に対する大きな付加価値と言えます。今後も、自分たちの存在意義と役割を見極めながら活動を継続していきたいと思います。
(2008年8月5日 東京・「オフィス町内会」事務局にてインタビュー取材)
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