先日、当サイトのサポートをしてくださっているJFEホールディングス株式会社による最新版の経営レポートをいただきました。企業が実施している環境への幅広い取り組みなどについて読み進め、ふとバックカバーを見ていると、そこに見慣れないロゴマークと共に「間伐に寄与した紙」という文字を見つけました。
企業が環境配慮に対する真摯な姿勢を表明するにあたり、経営レポートに使用する紙にもこだわりを持っていることを知り、早速インターネットで『森の町内会』という活動を検索してみると、企業が“ある紙”を購入することによって、環境保全へつながる新しい仕組みが見えてきました。
岩手県岩泉町。その名が成す通り、透明度が高い湧き水で有名な龍泉洞を始め、水源がとても豊かな本州一面積が広い町として知られています。その総面積1,000平方キロメートル弱の約94%は森林というから驚きです。そんな緑深い土地で2005年からある試みが始まっています。仕掛け人は東京にある環境NPO「オフィス町内会」。古紙の回収・リサイクル活動を行っている「オフィス町内会」の新しい活動である「森の町内会」は、企業による「紙」の購入を通して、岩泉町の森をより実りある森にするためのサポート体制をつくりあげました。まずは「森の町内会」による「間伐に寄与した紙」と間伐促進活動の概要をご説明しましょう。
森の健康を守るためには、成長過程において過密な環境になった森から不必要な木を間引くことにより、日光を保ち、下層部の植生を守り、豊かな土壌と木々の生長を図ることが必要になります。間伐を行わない森は、栄養が効率的に配分されず、結果、生長が鈍くなり、森の大きな役割とも言える保水力・治水力が低下し、天災が起きやすくなる一因となります。しかし、間伐事業には作業や輸送、重機の導入など多大な費用がかかり、間伐材の売却益に自治体からの補助金を補填しても、赤字事業になってしまうことが多く、なかなか間伐が進まないのが現状です。
「森の町内会」が普及に努めている「間伐に寄与した紙」を企業が購入すると、その紙代の中には間伐事業が行われるに足るだけの支援金(紙代の約10%)が含まれており、結果として間伐が促進され、環境保全への貢献につながります。また、「間伐に寄与した紙」はFSC認証(*)を満たした紙として、購入企業への安心を保証しています。
「森の町内会」は、企業が「間伐に寄与した紙」を購入することによって行われる間伐材に対して、岩泉町と製紙会社の協力のもと、その出自を保証し、トレイサビリティを明確にする取り組みを行っています。
「森の町内会」は企業にとって、自身の活動において必要不可欠である「紙」の購入という自然な行為が環境保全につながる新しい仕組みのようです。寄付金を募るという従来の企業協賛活動とは一線を画したこの妙案を考えた「オフィス町内会」とは一体どのような団体なのでしょうか?インタビューに応じてくださったのは、代表を務められている半谷栄寿さんです。
○森の町内会のwebサイト
→ http://www.mori-cho.org/
半谷栄寿 Eiju HANGAI オフィス町内会事務局代表(東京電力株式会社 執行役員)
1953年福島県生まれ。1978年東京大学法学部卒業、東京電力株式会社入社。1989年総務部文書課副長、東電社内の古紙リサイクルに取り組む。1991年、環境NPOオフィス町内会を設立し、以降、事務局代表を務める。1996年、株式会社Jビレッジ 取締役企画営業部長。2000年、マイエナジー株式会社 取締役副社長。2005年、東京電力株式会社 事業開発部長、2008年同社 執行役員。
○オフィス町内会のwebサイト
→ http://www.o-cho.org/index2.html