~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2025年春号 Ecopeople 103
横浜市みどり環境局環境科学研究所
インタビュー

1 横浜市環境科学研究所について教えてください!

編集部
2025年は「昭和」の年号で数えると昭和100年。この100年で、昭和、平成、令和と年号も変わり、世界、地球、横浜、そして生活者の意識も大きく変わったことを実感します。
環境科学的研究所がスタートした当時と現在では、その研究対象も活動の場も大きく変化したのではないでしょうか?

浦垣
横浜市環境科学研究所が現在の名称になったのは1991年、その前身である公害研究所が横浜に発足したのは、これに先んじること15年前、1976年です。
当時は地球温暖化が現在ほど大きな問題と認識されておらず、生物多様性という言葉がまだ世の中になく、いわゆる“公害”と呼ばれた大気や河川の汚染に対応する部署でした。それが平成に入り、現在のような都市環境全体の調査研究に取り組む組織として改組されました。この数十年で研究内容も、市民の方々の環境意識も、大きく変わってきたと感じています。
近年は、横浜市内の環境だけでなく、より広域の調査データを近隣の自治体と共有し、横浜の課題に対処する必要があると感じています。
編集部
現在はどのレベルで、広域研究が実施されているのですか?

浦垣
光化学スモッグなどの大気汚染の調査を神奈川県や川崎市と連携して実施しており、東京湾の赤潮対策などでは、東京都、川崎市、千葉県などの自治体と定期的に情報共有や意見交換を行っています。


編集部
この動きは全国的に広がっているのでしょうか?


安全・安心な市民生活を担保する上で、地球温暖化、生物多様性などの広域的な課題に対する調査研究の重要性がますます高まっています。
都道府県や市町村などの自治体が他の自治体と連携し、課題解決に向かう動きが全国的に広がってきていると感じています。
編集部
異常気象の原因である地球温暖化問題をはじめ、世界は今こそ結束するタイミングにあることは、一般生活者も痛感していると思います。
横浜市の課題にもいろいろあるかと思いますが、横浜と言えば、やはり海。
横浜港でのプロジェクトについてお聞かせいただけますか?

浦垣
公共下水道の整備や工場排水の規制などにより、横浜港の水質は1990年代から大幅に改善されました。ただ、依然として夏季には赤潮の発生や海底付近の貧酸素化など、さまざまな課題があります。
その横浜の海を、それぞれの地域の特性に沿ったスタイルで再生させるために横浜市環境科学研究所では、JFEスチール様と連携して、山下公園前の海域で「豊かな海づくり事業」のプロジェクトを進めています。このプロジェクトでは、JFEスチール製の鉄鋼スラグ製品を海底に設置することにより、生物の生息環境を改善し、生物相の回復と生物による水質浄化能力の向上を目指しています。