~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2023年春号 Ecopeople 95『三人三様、その未来の姿』

6 未来は、明るい場所

編集部
山﨑さんがシンポジウムでも言っていらしたけれど、セーフティーネットはある程度、整備しなければならないと思うんだけど…。
ただ、世の中的にはペシミスティックな若者が増えたと言われているけれど、三人の皆さんは未来に対してかなり違うビジョンをもっていらっしゃるように感じますが?

前田
「未来」っていう言葉に最近の子どもたちは暗いイメージをもっていると聞いて、私はすごい衝撃を受けました。私たちの世代は未来は明るいイメージ。書き初めで「未来」って書いちゃうような。
山﨑
僕は『ドラえもん』のような世界を想像するタイプだけど、最近の未来ものの作品とか観ていると、大きな夢がないことにびっくりしてます。
前田
私たちは夢見がちなんじゃないのかな?
いい方向に未来を想像する傾向があるかも。
山﨑
個人的な意見ですが、現代社会は二極化していて、これまでのように優良企業に就職すれば成功人生を歩めるという保証されたレールが見えないからこそ、僕らのように、自分で歩いていけちゃう人はどこまででも明るい未来を想像できる。けれど、そういう生き方ができないと思っている人にとっては未来はすごく暗い。
未来の描き方も、現在の生き方も、自分で自分をマネージできる人とそうでない人の間には大きな差が生じているなっていうのは感じますね。
久保寺さんはどう思いますか?
久保寺
山崎君が言う二極化があることはよく理解できるけれども、この2つに本質的な違いはないと思っています。「歩き方を知っているか」または「知らないか」、ただそれだけのことだと思っていて、知っている人はどんどんその先へと歩いていける。
でも「知らない人」、「知ろうとしない人」は、誰かが敷いた既存のレールに沿って歩いていくしかないと思ってしまう。意識の違いだけじゃないかと思っていて。
前田
私はそこに自己肯定感をプラスアルファすることが大切だと思うんです。
最近は子どもの自殺願望率が高いとか、暗いニュースを聞くにつけ、「小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感を高めていく」重要性が語られているけど、実際にそういう機会が子どもたちにどれだけ与えられるかにかかっていると思うんです。
周りがちゃんと子どもたちを褒めることが大切で、「これはダメ、あれはダメ」と規制するのではなく「ここができたね!」と、もっともっと積極的に褒める世界になってほしいなって思います。
私は今、それを提供できるよう頑張っているっていう感じです。
山﨑
僕は社会構造的に、「歩けない人」とか、「歩きたくない人」でさえも適切なスピードで一緒に行動できる「動く歩道」みたいなものを、社会全体でちゃんと作るべきだと思っています。
久保寺
そこは子どもだけじゃなくて、大人に対してもそうしたシーンを用意していくというか…。私は、すべての基盤は教育だと思っていて、すべてまとめて教育することの意義はすごくあると思うんです。
編集部
理想を掲げ、ポジティブに生きていくことはすごく大切なことだと思います。
ただ、皆さんがやろうとしている仕事、つまり教育への然るべき対価がついて来ないと、経済的にやっていけなくなる。
“ポジティブに生きると、いいことが起こり、成功する” そういう成功例が見えると、「それなら自分もやってみよう!」っていう人が増えるんじゃないかしら?
教育の対価、その査定についてはどう思っているの?

前田
私は自分がやりたいこととか、ビジョンを他人に話すことこそが大切かなって思っています。心の中でひそかに思っていても、それが伝わらないと実現しないと思うんです。
私の中学校では、「夢を英語で語る」という英語の授業があって、英語スピーチ大会があったんです。スピーチのテーマは「家族」とか、「将来の夢」とか複数あったんですが、「夢を語ることは大切だ」とおっしゃった先生の一言に、「よし!そんなに『将来の夢』を語ることが大切なんだったら、私は語ろう!」って決めたんです。何しろメチャクチャ素直なので!(笑い)
その大会で自分の夢を語ったのは私ひとりでした。
それまでは「恥ずかしくて自分の夢を語るなんて絶対に無理」って思ってたんですけど、覚悟を決めたら、自分自身が変わるかもしれないと思って…。
実際に、言葉にしてみたら、応援してくれる人が現れ、今は黙っている人も「私の夢を知っているんだ」と思うだけで、なんか心がとっても軽くなったんです。
中学生時代の経験を起点とし、そのおかげで今は人に話すこと、同時にいろんな人の夢も聞きたいなって思うようになり、それが応援できるのだったら、お互いに助け合い、どんどんコラボしていきたいという発想へと変わっていきました。
だから、年代なんかは全然関係ないって思います。たとえば、小学生は言いたい放題のところがあるので、子どもたちには「それもこれも全部叶えられるよ!」って言っています。