~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2023年春号 Ecopeople 95『三人三様、その未来の姿』

4 より良く生きるために

編集部
ここまで3人のお話をそれぞれにを伺い、共通するキーワードが炙り出されてきたようです。希望を託せる自分の未来を手に入れるには、教育が非常に重要だと三人三様に感じていらっしゃる…。
さらにご自身だけでなく、他人も含む世代全体のパワーを強めることで、社会全体を活性化できると考えていらしゃる。そして、その基盤となるのが教育だと…。
今もまだ十分若いのだけれど、さらに若かった10年くらい前、自我を自覚し始めた小学生から中学生、さらに高校生へと進む時間、皆さんは社会の変化をどう見ていらしたのかしら? 気候変動や大災害、政権交代、市場経済の動向など…、たとえば2008年のリーマンショックは記憶にありますか?

久保寺
僕は小学生でした。
編集部
右肩上がりの経済発展のシナリオに暗雲がかかり、社会が不安定化する時代に、小、中、高を経て、現在、大学生、そして大学院生になられた。その間に世界情勢の流動化はさらに進み、未来へのイメージは不透明化し、世界中が“あるべき未来の姿”を共有することが非常に困難な状況に陥っていったと感じます。
そのような状況下にあっても、皆さんは“諦めない世代”として、皆さんの次世代にも「諦めないでほしい」と考え、サポートする教育が重要だって思っていらっしゃる…。
かなり多くの若者の間で、現在“デストピア”という言葉が囁かれ、「未来なんか、どうなるかわからない」という少々投げやりな声が次第に大きくなっているような印象がありますが、皆さんはそれについてはどう思われますか?
たとえば山﨑さんがおっしゃる特撮、“生身の人間がやるべきシーン”があるとして、ジェームス・キャメロン監督の『アバター』をどのように評価されましたか?

山﨑
特撮がなくならない限り、新しい表現技法としてどんどん受け入れるべきだと思います。『アバター』は猛烈な映像の進化で、それはもう大歓迎です。ただ、今まで培ってきた小さなミニチュアを大きく見せる撮影技術など、過去から継承してきた財産とも言える技術を捨て去り、全部CG(Computer Graphics)で作ればいいっていうのは頷けない。
編集部
どういう理由で頷けない?

山﨑
それでしか表現できないものもあるわけです。
CGでは出せない迫力、さらに舞台芸術で登場する「黒子」のように、観客は「見えているもの」を「見えないもの」として見なす、作り手側と見る側の「暗黙の了解」にも通じる感覚が特撮にもあるんです。実はミニチュアだとわかっていても、「これは本物として見る」みたいな感覚です。 こういう共犯感覚は、特撮では成立します。新しいものを導入するのは悪いことではありません。ただ、新旧それぞれの良いところを共存させ、古い技術も残していく思考も忘れてほしくないんです。
編集部
一般論ですが、新技術が発表され、それが提示するパーセプションの素晴らしさを既存社会は認めつつも、直ちに受け容れることには躊躇しがちです。価値観を刷新し、より良いシステムへと新旧の移行を円滑に進めることはいつの時代も難しいものです。
ただ現在、私たちは気候変動や二極化する世界、世界平和へのアクションなど、待った無しの状況に直面しています。どのような行動をすべきかを早急に議論し、連携行動をしていかなければならないはずです。ただ、なかなかそうはいかない…。しかし、世界をより良い方向への舵を切っていくには、継続する教育がベースになると。
それは幼児期から始まり、生涯にわたって行われるべきだと。