本年度の年間フォトグラファーをご快諾下さったのは野町和嘉さん。国際的にも高い評価を受けてきた野町さんがそのカメラが収めてきたのは砂漠、極限高地、あるいはサバンナの奥地など、いずれも厳しい自然環境の生の現実です。本年度は世界各地の山岳地帯にフォーカスし、そこに息づく信仰、人々の暮らし、そして圧倒的な自然を作家の撮影メモと共にご紹介します。
写真家 / フォトジャーナリスト / 日本写真家協会会長
サハラ砂漠と、そこに生きる多彩な民族をとらえた最初の写真集『SAHARA』(1977年刊行)は、日、英、独、伊、仏の5ヶ国で出版。発表された作品集の大半が国際共同出版され、日本はもとより、国際的な賞を含む数々の賞を受賞し、高く評価されている。いずれの作品にも国民性や文化の違いを超え、人々に感動を与える普遍的なものが存在する。なかでも1995年より4年の歳月を費やしたイスラームの聖地、メッカとメディナの取材は、それまで撮影不可能と思われていたイスラームの二大聖地と大巡礼の行程を、世界で初めて写真に収めたものとして、世界的な話題となった。
2005年、およそ30年間におよぶ撮影の総決算的写真集『地球巡礼(英語版タイトルPILGRIMAGE)』がイタリアで編集され、日本を含む計9ヶ国で同時出版されている。
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【主要受賞歴】
1979年 日本写真協会新人賞
1982年 『LIFE』誌より米国報道写真家協会年度賞銀賞
1984年 第3回土門拳賞
1990年 芸術選奨文部大臣新人賞 日本写真協会年度賞
1993年 講談社出版文化賞
1997年 日本写真協会年度賞 東川国内作家賞
2002年 大同生命地域文化研究特別賞
2006年 藤本四八写真文化賞
2009年 紫綬褒章
2014年 日本写真協会国際賞
標高2000から4000メートルを超す山岳地帯には、地球誕生以来、連綿と続いてきた地殻変動や気候変動によって生じた膨大なエネルギー活動の痕跡が明らかな“かたち”となって集積されています。その一方、極限高地という厳しい自然環境を生き抜いてきた人々は、平地や海辺では想像もつかないほどの困難さの中で、独自の死生観や宗教観を継承し、命の絆を未来へと粛々と繋いできました。
グローバリゼーションが進み、価値観の均一化が急激に浸透する現在、極限高地の人々が守り続けてきた“何か”を、今改めて、写真を通して探って行きたいと思います。