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■“It's my town (私の街だ)という意識

編集部:それでは改めて蘇我エコロジーパークについてご説明いただけますか?

山田:対象となるエリアは蘇我特定地区西側の「リサイクル機能ゾーン」でして、約40ヘクタールの敷地です。
ゾーニングとしては、「資源循環・エネルギーゾーン」、「環境フロンティアゾーン」のふたつのエリアを配置して、段階的に整備していこうと考えています。
目標としては、現時点の計画では3段階に分け、第一期分の12ヘクタールの整備が平成17年度までには完了すべく計画し、動いています。その後の第二期で、17ヘクタール分を、さらに最終段階の5ヘクタールの整備は平成28年度、それで一旦完了とする予定です。

編集部:ずいぶん遠大な時間軸での整備計画なんですね。

山田:財政的な理由もありますが、早くできることよりも後悔のないまちづくりを市民の理解の下で実現することが大切だと思います。時間をかけてゆっくりと整備する、そのプロセスで学ぶことはたくさんあるはずです。行政はコーディネーターとして、より多くの方々の意見を取りまとめる役割も担っていることを最近は痛感しています。
社会全体が未来に向かって継続的な発展を可能にする環境を作り上げることは、
“今”の価値観だけでは不十分です。“未来の設計”は現在予想される情報と過去の経験とで立案されるのが常ですが、現実にはシュミレーションしたスピードや方向性で順序良く事態が進展する訳ではありません。常に不測の事態は起こります。市民生活に密着した環境整備プロジェクトを推進する上で重要なことは、タイムスケジュールだけを厳守するのではなく、現実を受け入れながら、目的にあった中身にどんどん進歩していける柔軟な許容力とそれへの果敢な実行力ではないでしょうか?

編集部:机上で立案したプロジェクトを、現実にしっかり機能させるのは、また別のことですものね。
それにどんな優れたシステムを構築しても、高い意識も持った住民の協力なしには実行は不可能ですものね。

山田:そうなのです。どんな条例や施設を作ってもその意味をしっかり理解し、ルールを遵守し、活用する市民がいなければ、法律や事業計画など絵に描いた餅のようなものです。
ですから、蘇我のまちづくり(蘇我特定地区整備計画)では、明確な基本理念を掲げ、市民ひとりひとりが“私事(わたくしごと)”として受け入れ、協力をしてくれるプロジェクトになるよう広報には注意を払っています。
本プロジェクトの出発点となる基本理念はこんなイメージです。
地域のゼロエミッション(→エコワード)推進を図ると共に、市民に親しまれる都市型環境拠点づくりを目指す。これを具体的に目標として整理すると

1

資源やエネルギーの循環モデルを地域レベルから広域レベルへと構築する。

2

地元企業等と連携し、新産業の創出を促進する。

3

蘇我特定地区全体及び隣接地域等との環境共生まちづくりに寄与する。

4

産業集積により生じる環境負荷を低減する。

5
市民に親しまれる環境学習拠点を形成する。
この5項目になります。

編集部:1の地域から広域レベルへの発想と3の近隣地域の環境共生は根底となる精神には共通したものがありますね。確かに限定されたエリアで理想郷のような基準を作り、それが仮に遵守されても、近隣がそのレベルに達していないと、結局“水は低いところへ流れる”の論理で高いレベルの環境保全は維持できませんものね。

山田:最近、蘇我特定地区内に整備される商業施設の関係者、たとえばスーパーの管理担当者などと話していてしみじみ実感するのですが、彼らは意識の高い消費者に照準を合わせ、あらゆるレベルでクオリティーの高い商品管理を導入し、食の安全を守ろうと日夜努力をしています。生産地が世界中に拡散した現代のような時代だからこそ、店頭で千葉の消費者が安心して買い物が楽しめる環境づくりをしようとしているのです。未来への発展と予想させる企業は“厳しい消費者たち”の存在を念頭に置き、実に緻密な仕事をしています。商業施設全体で高いレベルでのエネルギー管理や資源活用のシステムが出来れば、蘇我にはコミュニティーという枠組みでのビジネス、マネージメント&ライフスタイルの包括的なモデルが出来る潜在力があるのです。

編集部:なるほど!それが2の産業の促進や4の環境負荷の低減にも繋がるという訳ですね。

山田:人間が仕事をし、遊び、生きていく、すべてのことはリンクして、自分の現在の社会環境に何らかの影響を与えていることを、既に多くの人は気づいています。ゼロエミッションに向けての有効な方策は、まず高効率システムを緻密なフレームとして構築すること。次にそれをしっかり市民に伝達すること、そして最後はそれをしっかり遵守できる人間を育成することではないでしょうか?モラルのある社会を育成するにはそれにふさわしい教育と環境が必要でしょう?

編集部:“マイタウン”、“誰のものでもない私の街”というモラルと感情を持って、街を愛することが環境との共生を実現する切り札になるということですね。確かにどんなに環境が整備されても、それを愛し育てくれる人間がいなければ街路樹の緑も優れたシステムも無意味ですものね。
現代社会、特に大都会で暮らしていると様々なことが見事なまでに分断されて、自分の基本的な生活がどのように構成され、支えられているかが分からなくなる時がよくあります。ゴミは分別しているけれど、それらはどのように最終処理されているのか?そのためにどれくらいの費用がかかっているのか?自分の生活の境界線が見えない、そんな不安があります。

山田:蘇我特定地区内では、現在既にガス化溶融施設とメタン発酵ガス化施設などの廃棄物処理施設の整備も計画されているんですよ。
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