>>PAGE-2 リーダーシップのある『SUSTAINABILITY』(継続可能) Q:Sustainable resort communityという発想が、ウィスラー・スキー場開発の最初からあったわけではないですようですね。いったい何かきっかけだったのでしょうか? デヨング:環境への意識が最初から高かったわけでは全くありません。現在、私たちが認識しているような環境問題の現実というものは、20年前には誰も気がついていなかったわけですからね。ウィスラーの場合、直接のきっかけとなったのは燃料の流失事故でした。1992年に貯蔵してあった燃料が漏れ出して、魚が産卵する渓流に流れ込み、水を汚染してするいう事故が起こったのです。当時私はマウンテン・マネージャーというポジションにいて、スキー場オペレーションの責任者でした。 この事故が私たちの責任であることはハッキリしていました。燃料貯蔵のシステム・デザイン自体も稚拙なものでしたし、取り扱っていた人間のエラーも明白でした。私たちはそれまで「ゲストやスタッフの安全確保」という問題については一生懸命有効なシステムを作り続けていたけれど、“自然環境を護る”という問題については、当然すべき努力を怠っていたことに気づかされたのですね。 スキー場の運営では色々な事故が起きる可能性はいつでもあります。スキー客のけがとかね・・・でも、800 ガロン(3028 リットル) の燃料流失は私にとって最もつらい事故でした。この事故はスキー場にとって重大な損失だったというだけではなく、自然環境に直接関与した最初の惨事でしたからね。渓流の汚染は目の前に広がっていたし、ひどい匂いもするし油まみれにもなる...。 私は感情的に強い衝撃をうけました。 Q:その事故を処理するにあたり、どこから始められたのですか? デヨング:まず、現実に正直に向き合うということから始めました。政府機関も地元のメディアも法的な責任追求はしてこなかったのですが、この事故から何かを得ることがあったとしたら、真実を包み隠さず公表して、自分たちの過ちを明確に認め、「汚染処理に全力を尽くす」と確約することだと思います。このような事故が二度と起きないように、必要なすべてのステップはひとつひとつ踏んで行くしかないですよね。それは、まさに私にとっては「目を覚ませ!」っていう声でした。責任をハッキリ認め、事故処理の過程を積極的に公表したおかげで、まず地元のメディアやコミュニティからの信頼を回復することができました。この基本的な姿勢は今でも変わりません。環境問題については常に率直に状況や処理経過を公表します。 環境問題に関して、大抵多くの法的規制が作られていますが、そこにはいつでも解釈のあいまいな「灰色」の部分がありますよね。ただ、こうした場面でに選択肢はふたつだけです。“リードする”か“従う”かです。会社としても個人としても環境問題に真剣に取り組むならば、決断すべき立場は同じのはずです。法規やガイドライン内のとどまり、“従っている”だけでは環境問題へのリーダーシップは生まれないでしょう。「sustainability」を確立するための突破口など開けるはずもない!私たちは積極的に自然保護のための働きかけを“リード”しなければならないと思っています。ただ“従う”だけではなくてね。 さらにこの選択肢の裏には、実はもう一つ重大のポイントがあるのです。私たちは自分たちのビジネスを長い時間のサイクルの中で護るために、“今、何をしておくべきか”ということです。私たちが自然保護への働きかけを常に“リード”していけば、人々は私たちが将来に行うであろう「開発」にも前向きに考えてくれる前提を構築することにもなるのです。それは、私たちが開発への責任をきちんととり、状況をリードしてきたという信頼の実績を、コミュニティの人々は示すことになるからです。現行法に“従って来た”というだけでは不十分なのです。こうした決断が日々発揮されていないと、計画に裏付けられた将来の方向を自分たちでは決められないような事態に陥ることになるはずです。 >>PAGE-3 |
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