編集部
東京スカイツリー誕生の経緯についてお話しいただけますか?
今村
つい先日、アナログから地上デジタルへの切り替えも一部の地域を除いて完了したところですが、新しい時代に適応した安定した放送システムを支える新たな電波塔の建設が急務となり、在京放送事業者、つまりNHKを始め民放キー局が2003年12月に「在京6社新タワー推進プロジェクト」を発足したことに端を発します。
編集部
確かに、東京の電波塔としてその任を果たしている東京タワーでは昨今の高層建築の増加で都心部中心に、電波が届きづらい状況になっていますね。
今村
近年の首都圏での高層建築の増加は著しいものがあります。六本木ヒルズは238メートル、東京都庁舎が 243メートル、横浜のランドマークタワーは実に296メートルと、東京タワーの333メートルにほぼ迫る勢いですから電波が届きにくいエリアが出て来るのは当然の成り行きでしょう。以前より弊社はこの業平橋の貨物ヤードの有効活用にめぐっての検討に取りかかっていました。ちょうど、東京メトロさんの半蔵門線との乗り入れ工事も一段落し、そろそろ具体的な施策をと考えていた時、この新しい東京の電波塔建設プロジェクトが公表され、2004年12月、墨田区と地元町会や商工関係者などの地元関係者の皆様が新タワーの誘致への協力を正式に弊社に要請されたのです。
編集部
つまり、地元の要請を受けての今回の誘致表明だったのですね。
今村
そうです。東武鉄道は沿線地域との共生は何よりも大切に考えていますが、所謂"ディベロッパー"ではありません。本社を墨田区に置き、ここを拠り所にして事業を展開してきましたが、この方針は今後も変りません。まずは本業である鉄道輸送を第一義とし、地元との連携についてはあくまでも鉄道会社としての分をわきまえたスタンスで、地元の皆様への"おもてなし"として、ゆるやかな範囲内にとどめてきました。ある意味では、商売上手とは言えないかもしれませんね(笑)
弊社は沿線の他業種の皆様と共に、お互いに寄りかかることなく、永いサイクルで悔いのないおつきあいをしたいと考える社風があります。ですから今回も、地元の皆様の地元を盛り上げたいというご意向を受け、新タワーをこの墨田区に建設するチームの一員として2005年2月、誘致表明をさせていただきました。そして翌年3月、めでたく私どもに最終決定の報が届き、5月には「新東京タワー株式会社」の設立に至ったというのが経緯です。