↑シャーマン将軍の木の枝は地上から40メートルほどのところにあり、本当に巨人が大きく手を広げたように見える。 |
1879年にヨーロッパ人で最初にこの木を「発見」したのはウォルバートンという男で、彼は南北戦争のときに自分が仕えた将軍の名前をこの木に与えた。この木を見上げたときに私の胸にあふれて来た「自然の優しさに触れた喜び」と、名前のもとになった将軍の生涯とはあまりにも大きな違いがある。「なぜシャーマン将軍なのか?!」とめまいを感じるほどだ。
皮肉なことに、ジャイアント・セコイアは樹皮の厚さが60センチ以上もあり、ちょっとやそっとの山火事では燃え上がったりしない。むしろ山火事はこの木の世代更新に必要なものですらある。種はニワトリの卵大の松かさの中にぎっしり詰まっているが、山火事のような急激な気温上昇がないと種がはじけることはないからだ。さらに、この木は太陽の光をたくさん浴びなければ成長できないので、火事で下生えや他の木々が焼けてしまってできた空間に新しいジャイアント・セコイアが生まれるというわけだ。 公園内の多くの木々の幹に黒い焼け焦げついている。山火事や落雷で樹皮が焼けた跡だ。それでも「巨人」は成長を続ける。公園では落雷による山火事はできるだけそのままにして自然消火を待ち、ジャイアント・セコイアの森の自然更新を促す方針を採っている。
しかし、ジャイアント・セコイアはけして不死ではない。ヨーロッパ人がシエラネバダに入って来てからすぐ、木材として次々と切り倒されていったからだ。ミュアをはじめとする人々が奮闘しなければ、巨人の多くは消えていたことだろう。伐採は止まっても危険が去ったわけではない。ジャイアント・セコイアはその根を浅く広く張る性質がある。幹周辺の木々が踏み固められたり、強い風が吹いたりすれば、自らの重さに耐えかねて倒れてしまうのだ。 セコイア国立公園、その北側に隣接するキングス・キャニオン国立公園、そしてさらにその北に広がるヨセミテ国立公園は、シエラネバダ山脈の裾野に点在している。これらの国立公園とその周囲の自然環境を総合的に護るため、総体的なエコ・システムの研究も米国議会の特別プロジェクトとして1992年から始まっている(www.ceres.ca.gov/snep参照 )。山脈の広大な裾野の自然を護り、人間の経済活動や社会生活と共存させ、次世代へ継続できる環境保護のありかたが模索されているのだ。
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● セコイア国立公園とキングス・キャニオン国立公園の公園へは車一台につき20ドルの入園料(7日間有効)が必要。詳しい情報はwww.nps.gov/seki ● 交通アクセス セコイア国立公園に直接アクセスする公共交通は無い。フレズノFresnoまではロサンゼルスからアムトラック鉄道やグレイハウンドのバスで約5時間。ここでレンタカーを借りると良いだろう。フレズノからは車で東へ州道180号線で約2時間。 ●宿泊 公園内には設備の整ったWuksachi Lodgeなどのホテルを始め、キャンプ場も点在している。宿泊についての情報はwww.visitSequoia.com で。 ● ハイキング 公園内には1300キロ以上ものハイキング・トレイルがある。公園のほとんどはハイキングでしかアクセスがない。車で行けるシャーマン将軍の木周辺などには短時間で楽しめる遊歩ルートもある。 |
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