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スタンレー公園のあちこちに顔を見せるアライグマ。可愛い顔だが、案外気が荒いので要注意。
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毎週、日曜日の午後1 時。スタンレー公園の入口近くにあるネイチャー・ハウスには、ハイキング姿の人々が集まって来る。皆の表情は期待にワクワクしている。
スタンレー公園は、バンクーバーのダウンタウンの西端、海に突き出した小さな半島のように広がっており、都市内の公園としては北米最大規模の一つ。公園の外周約10キロを巡るシーウォール・プロムナードは爽やかな潮風と森林浴が同時に楽しめる理想的な散策ルート。公園内には水族館や薔薇園などもあるが、広大な敷地のほとんどは温帯雨林の深い森だ。
ネイチャー・ハウスに集まって来たのは、これから公園のスタッフやボランティアのガイドと一緒に、この森の自然観察に出掛ける人々だ。スタンレー公園の森の中には、たくさんの野性動物や野鳥、野草や様々な木々が生きており、自然の「驚異」に満ちている。
自然との共存は暮らしの基本
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リスは公園内だけでなく、バンクーバーのダウンタウンの歩道でもよく見かける。 |
1860 年代、現在スタンレー公園の敷地になっているエリアで森林の伐採が始められた。木材の利用と軍事用地を切り拓くためだ。しかし、当時「市」として独立したばかりだったバンクーバー市民は、市議会や国に強く働きかけ、とうとう1889年にはこの土地を公園として確保してしまった。当時の「バンクーバー市民」の数が1000人足らずだったことを考えれば、どれほど強い共通の思いがあったのかが想像できる。
以来、バンクーバーでは公選で公園管理委員が市民から選ばれるシステムが確立されている。「公園は都市づくりの基本」というのが市民の一般的認識だ。
自然と人間の暮らしは対立したり、克服したりするものではなく、共存してこそだというのも「バンクーバー流」の発想。遠くまでわざわざ出掛けて行って自然を味わうのではなく、日常活の中で自然の素晴らしさに心と目を向けるのが大切という姿勢が、市民生活のあちこちに感じられる。
スタンレー公園で毎週催される「自然観察散歩」のイベントもその一つ。公園の遊歩道を歩いている時、ほんの少し注意深くするだけで、森林再生のサイクルや、野性動物の足跡、野鳥の巣、可憐な野の花などに出会うことができるからだ。自然と人間の共存にはこうした「小さなコツ」を学ぶことも大切だろう。この催しのように、楽しみながら学べるとならなおさら良い。
旅行者でも参加できる多彩なエコ・プログラム
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スタンレー公園のナチュラリストから、今日の観察のポイントを聞く参加者たち |
バンクーバー市を囲む、幾つもの自治体でも公園管理委員会などが企画する「ミニ・エコ・ツアー」がたくさん催される。 例えば、バンクーバー市の南に位置するデルタ市のジョージ・C・ライフェル渡り鳥の保護区では、季節ごとに渡ってくる鳥の解説ツアーが催される。子供やシニアなど、年齢や興味別に工夫をこらしたプログラムが用意されている。
これらの催しのほとんどは旅行者でも気軽に参加できる。インターネットで情報を入手して、カナダへの旅の日程に加えてみてはどうだろう。