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--絶滅の危機に瀕しているフロリダのマナティ
--世界で一番優しい動物に会いに行くゆったり旅
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マナティは水の中で生活する草食動物。ユーモラスな表情と不思議なほど優しげな瞳、ふっくらとした胴体。その体を揺らすようにしてユックリユックリ泳ぐ。外敵に対する防御手段をほとんどもたないこの動物は、今、絶滅の危機に瀕している。マナティの生息地域の中心であるフロリダの海岸沿いに住む人々は、マナティを保護し、共存するための方法を模索している。しかし、できるだけそっとしておくのがベストと考える人々がいる一方で、観光資源として利用すれば、保護にかかる資金も作れ、多くの人にマナティのことを理解してもらう助けになると主張する人々がおり、両者の間には深い溝がある。
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フロリダ半島の西側の中心地タンパは、高層ビルが立ち並ぶ活気あふれる商業都市だ。街の中心から南に車で約20分の所に、周辺の電力をまかなっているタンパ火力発電所がある。一見無骨な雰囲気のこの壮大な発電所は、実はマナティと住民を結ぶ大切な役割を果している。
マナティは海水、汽水,淡水のいずれにも生息できるが、水温の変化には非常に敏感。理想的なのは摂氏21度ぐらいで、急激に水温が低下すると死亡することもあるほど。そこで、この火力発電所から流れ出す温かな水がマナティの冬の生活を助けることになる。
そして、住民のために発電所に隣接して「マナティ観察センター」が設けられ、水の排出口の近くに集まってくるマナティをすぐそばで観察することができるようになっている。このセンターの入口には「テクノロジーと大自然の出会う場」と誇らしげに書かれている。
センターは毎年11月中旬から4月中旬までオープンする。ピーク時の1月から2月は70から80頭ものマナティが体を寄せ合うようにして泳いでいるのが見える。発電所は水を汚さないように細心の注意を払い、人々はセンターの中の展示でマナティの保護には何が必要かを学ぶ。
ゆったりとしたマナティの姿を眺めていると、心の奥の方からすっかりリラックスしてくる。センターを訪れる大人も子供も皆、帰る時にはやわらかな笑顔になっている。
こうした鑑賞型の接し方がある一方、マナティの生活テリトリーに積極的に入って行く「マナティ・シュノーケルツアー」も人気がある。一番有名なのは、タンパから車で約90分北上した所にあるクリスタル・リバー。この周辺では多い時には300頭ものマナティが現れ、夏でも数十頭が生息している。
この村には、「ボートでマナティの群れに近づき、シュノーケルを使ってマナティと泳ごう!」と宣伝している業者もいる。業者のパンフレットには、観光客がマナティに触っている写真まで載っている。
マナティに触れるほどまでに近づけば、この動物の優しさもより実感できるし、「癒される」という感じも強まるかもしれない。しかし、怯えやすいこの動物に無遠慮に近づけば決してマナティ側の「癒し」にはなるまい。
いくら気をつけてもボートとの接触事故の可能性もある。マナティの人気が高まるにつれ観光と保護の両立問題はさらに難しくなっている
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インフォメーション |
マナティ観察センター
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TECO Manatee Viewing Center
Apollo Beach, Florida
電話813-228-4289 開館 10:00-17:00 無料
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トラベル・インフォメーション |
「マナティ観察センター」のあるアポロ・ビーチはタンパから車で約20分。タンパはオーランドから車で西に約90分。タンパ市内からの公共交通のアクセスはないので、タクシー(United Cab 電話813-253-2424) 利用がおすすめ。
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マナティのいる自然保護公園 |
タンパのLowry Park Zooを始め、フロリダ州内の多くの動物園でマナティを見ることができる。中でもボートとの接触などで傷ついたマナティを保護、治療して自然に戻す施設をもつクリスタル・リバーのHomosassa Springs State WildlifePark は、フロリダの人々のマナティ保護への意欲と誠意が感じられる。冬になると、この保護施設のすぐ外にも温かい泉の水を求めてマナティが集まってくる。クリスタル・リバーへは、オーランドからFL Turnpike 経由、州道44号線で約90分。タンパからも州道19号線で約90分。
●Lowry Park Zoo / 電話813-932-0245
●Homosassa Springs State WildlifePark / 電話352-628-2311
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