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■アメリカ人の一日あたりのエネルギー消費量を知っていますか?
Q:新しい世紀における環境問題を論じる時、最初に考えなければならないことがエネルギーの安定供給とその効率のいい消費法だと思うのですが?
笠木: そうですね。限りある化石燃料の長期的利用、そして地球温暖化防止の観点から、20世紀まで人類が享受してきたような大量生産・大量消費の図式は新世紀ではもはや成立しないと考えるべきでしょうね。ところで、現代の先進国の人々、例えばアメリカ人の一日あたりのエネルギー消費量がどれくらいかご存知ですか?
Q: ちょっと想像がつきませんが、なんだか膨大な数字のようですね。
笠木:ご想像のとおりです。ある調査では、一日に230,000 kcalという数字が推定されています。ちなみにこれは、100人以上の人間が単に生き延びるために必要なエネルギー量に匹敵します。
地球の誕生は今から46億年前、生命の誕生は約30億年前と言われていますが、人類の誕生はさらに下って400万年前と推定されています。当時の猿人たちは食物連鎖の中で動物や木の実を採取して生きていましたから、一人の人間が一日に必要とするエネルギーは2,000 kcal程度だったと思われます。それが火を使うようになったころから5,000 kcalに増加し、農耕や牧畜が始まった1万年前になると、12,000 kcalというエネルギーを消化するライフスタイルを人類は手に入れます。実はこの時代を境に、人間は地球上の単なる生物の一員から自ら積極的に資源を採取し、エネルギーを変換し消費する特別な存在へと変質し始めたのです。
Q: それではこの段階で、つまり1万年前にすでに、我々人類はその後自らが引き起こす環境問題への引き金を引いてしまったというわけですか?
笠木:この時点で人類は生物圏という枠組みから抜け出し、地球上に巨大な人間圏を独自に作り出すことになっていったと言えるでしょう。この動きは時代と共に加速し、中世には風車や水車を回し、さらに石炭を燃やしてエネルギーを生産し、利用し始めます。このころで一日に26,000 kcal。さらに産業革命以降は熱機関を発明し、化石燃料を利用し始め一気に77,000 kcalと膨れ上がり、20世紀末には先ほどお話した通りです。
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人類のエネルギー消費の歴史
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統合化分散エネルギーシステムの図
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