急に入ってきたニュース。
チベットが、ラサが、燃えている。
どうして?
ダライ・ラマの教え子たち、
慈愛を語る優しい菩薩の弟子たちが
火の中にいる。
世界遺産であるとか、
密教芸術であるとか、
五体倒地の果てに行きつく
カイラスの高みから
観音菩薩は何を思う。
チベットの高地、
高山病になってしまうような高地を走る
高速鉄道のことを思い出す。
ゴルムド〜ラサを乗車して出会ったラマ僧は
ダライ・ラマの肖像を胸に忍ばせ
これは見せないほうがいい、とそっと
額づき接吻した。
抜けるような蒼い空の下で。
TVニュースの向こうに炎が見える。
煩悩の焔か。
人々が叫び、銃を持った男たちが
火に油を注ぐ。
バカげたことだ。
仏の住む雲の上で
なぜ人間はかくも愚かしい行為を
繰り返すのか。
天上にまで及ぶ百万年の愚行は
蜘蛛の糸から落ちた
カンダタを彷彿とさせる。
雲の上でCO2削減のための取引をする商人が
目の前で倒れた。
僕は以前チベットの友人からもらった仏頭写真の
伏し目がちで寂しそうな顔を見る。