安定した地中環境、その普遍性を重んじる

編集部

地中熱を利用されるとのことですが、このエリアにはDHCとして採用できるような地中熱が存在するのですか?

今野

地中の温度は年間を通じて15℃~17℃とほぼ一定という性質があります。地中熱利用はこうした性質を利用し、エネルギーの消費効率を大幅に向上させることが可能となるシステムです。地層により若干の差はありますが、基本的にはどの場所でも利用可能であり、そうした意味では広く普遍性のある省エネシステムと言えます。具体的には、地中に熱交換用のチューブを敷設し、そのチューブ内に水を循環させ、地中の熱と熱交換を行うことで、地表の大気と熱交換するより、より効率的な冷暖房が可能になるシステムです。当地区では熱交換用チューブの敷設方式として2つの方式を採用しました。建物の基礎杭と一体で敷設する「基礎杭利用方式」、広場予定地の地中に本開発エリアで最も深い120メートルまで敷設した「ボアホール方式」の両方式であり、それぞれの特徴を生かして地中の熱と効率良く熱交換を行うことで、省エネと省CO2効果のみならず、ヒートアイランド抑制にも大きな効果を発揮していきます。

編集部

日本ならでは緻密な技術のようですが、地中熱を利用したヒートポンプ、世界ではどのレベルまで採用されているのでしょうか?

今野

実は欧米では、すでにかなり広く導入されているシステムなのですが、日本はまさに発展途上というのが実情です。ただし今後は、全国各地で導入が進むと予想しています。

編集部

"安全で安心なエネルギーの確保"は一般の生活者にとっても大きな関心事になっている中、"生活の質、クオリティー・オブ・ライフ"を支える快適な住環境に欠かせない冷暖房への緻密なプランニングには感銘を受けました。

今野

東京、しいては日本の新しいランドマークを創り上げる、こんなことは滅多にあることではありません。東京スカイツリープロジェクトは、当事者たちが自身の矜持を賭けた仕事として受けとめ、そのコミットメントが仕事のクオリティをどんどん押し上げた事業のように感じています。我々の仕事は、こうした新しいランドマークにふさわしい環境配慮、すなわち省エネ、省CO2化を成し遂げる施設をしっかり作り込み、完成後さらに推進していくことと考えており、まさにこれからと考えています。

2011年7月21日
東武エネルギーマネジメント本社(業平橋)にて

今野さん