「どうして苺はこんなにカワイイの?」。苺を見るたび目を細めてつぶやく娘の気持ち、とってもよく分かる。可愛くて香りがよくておいしくて、その上ビタミンたっぷりで体にもいいフルーツなんて、そうないよね。愛しい苺に敬意を込めて、さっそくデザートを作ることにしましょう。

まずは苺選びから。
小粒でちょっぴり酸っぱそうな苺は、ジャムに。艶っぽくて形のいい苺はタルトに使うことにしました。保存目的のジャムというよりは“苺煮”。お砂糖も控えめにして、早めに食べきるようにします。作り方もいたって簡単。鍋に洗ってへたを取った苺300g、砂糖100gを入れてしばらくそのままに。水分が出てきたら中火にかけて、とろみが出るまで煮ます。途中アクを丁寧に取りながら、最後に好みでレモン汁を少々加えて出来上がり。きれいに洗った保存瓶に移して、冷蔵庫で保存します。

●ジャムを煮ている間に「苺のタルト」の準備です。
まずはサクサクのタルト生地から。鍋にバター60g、水大匙1を入れて火にかけます。バターが溶けたら火からおろし、1度ふるった小麦粉120g、砂糖大匙2を入れて木べらで手早く混ぜます。卵黄1個分を加えて混ぜ、生地の準備はOK。直径18センチのタルト型にバターを塗り、生地をのせ、厚さが均等になるように指で押さえるようにして広げていきます。多少のデコボコはご愛嬌。そのまま冷蔵庫で30分ほどねかせましょう。

●次はとろりと甘いカスタード作り。
ボールに卵黄2個分、グラニュー糖30g、小麦粉20gを入れて混ぜ、人肌に温めた牛乳160ccを少しずつ入れて混ぜます。鍋に移し、弱火でとろみがでるまで、木べらでゆっくりまぜまぜ。突然とろみがつくので、そうしたらさらに3分ほど混ぜて火を止めます。バニラビーンズ(またはバニラエッセンス)とレモン汁を少々入れ、冷まします。う〜ん。甘い香りがキッチンを包みこんで、し・あ・わ・せ。

●タルトの生地を焼きましょう。
優しい気持ちのまま、今度は先ほどの生地を焼きましょう。180℃で20分空焼きです。タルトが焼きあがったら熱いうちに型からはずし、冷まし、中にカスタードをたっぷり流し込み、苺を飾りつけます。そして、ジャム大匙3に白ワイン大匙1を混ぜてのばし、苺の上に塗って艶をだし、最後に粉糖をかけて完成!

段取りを上手くすれば、1時間少しで、ジャムとタルトが出来上がります。お家で作るデザートは、甘さを調節することが出来るし、なにより大好きな苺も惜しみなく使えるのがうれしい。苺で作る美味しい“お花畑”に、娘も大満足。さっそくお隣に住むおじいちゃんとおばあちゃんにも、春のおすそ分け、いたしましょう。


■歴史
イチゴはヨーロッパを中心とするキリスト教社会では、古来より「聖母の実」としてシンボル視されてきた果物でした。 古代ゲルマン人たちの間で“野いちご”は女神「フリッガ」へのささげ物でした。女神「フリッガ」は死んだ子供を天国まで送り届ける女神として、広く信仰されていました。その後キリスト教の誕生と浸透によって、フリッガは聖母マリアに置き換えられ、イチゴも同時に「敬慕の実」のシンボルへとなったのです。
現在栽培されているイチゴの先祖が現れたのは18世紀半ば、オランダのこと。
北米生まれのフラガリア・バージニアナ種と南米チリ生まれのフラガリア・チロエンシス種とされています。
 
■日本への伝来
日本に本格的に入ってきたのは1872(明治5)年以降。新宿植物御苑(現在の新宿御苑)の研究者、福羽逸人(ふくばはやと)氏が留学先のフランスやドイツなどから苗を持ち帰ったのが始まりとされています。 さらに、1899(明治32)年には改良品種「福羽」が誕生。これが日本のイチゴの歴史の幕開けを告げたのです。

■栄養価
イチゴは100グラム当たりで62ミリグラムのビタミンCを含む果物の宝石です。
温州ミカンで32ミリグラム、ハッサクでも40ミリグラムといいますから、文字通り果物の“優等生”です。 日本でつくられた品種はこれまで数百種、現在一般に広く出回っているだけでも約30種もあります。
そのシェアトップ(2003年統計)は栃木県出身「とちおとめ」、全体の33%に当たります。
輸入品と国産の比率は1対6で、輸入先のナンバーワンはアメリカです。
 
■食べごろ
イチゴの代表選手「とちおとめ」は11月終わりからせっせと実をつけ5月頃まで愛らしい実をつけます。産地や品種をチェックすれば、一年中微妙に異なるさまざまなイチゴが楽しめます。是非甘酸っぱいイチゴの魅力を極めてください!