今月からスタートした新連載、【エコキッチン】。オリジナルな視点で“食の魅力”と“料理の楽しさ”を発信しつづける中島有香さん。彼女のこだわりの原点は“今ここに生きている幸せ”です。その彼女に“ホンモノの食卓”をテーマに連載をお願いしました。お嬢さんのみゆうちゃんにも毎回ご登場いただき、ママと一緒にキッチンに立って素材選びから、調理法、そして食卓での楽しみまで経験してもらいます。子どもの健康な未来はそのまま地球の将来です。さあ、今日も元気に食べましょう!

Tomato  ̄トマト ̄

◆歴史と日本への伝来
トマトの原産地は南米のアンデス高原、メキシコを経てヨーロッパにもたらされたのは16世紀のことです。
ただ、あまりにも強烈な赤い色への抵抗感や独特の風味などから食用として受容されたのは18世紀に入ってから。実は約200年もの間は観賞用でした。さて、トマトが日本に渡来したのは江戸時代、やはり最初は観賞用として珍重され、食用になったのは明治以降です。キャベツやたまねぎ、アスパラガス、にんじんなど西洋野菜の仲間として食卓に載るようになりましたが、最初は赤い色が嫌われて見向きもされなかったようです。

◆ 食べ頃は夏
これまで日本の食卓でサラダなどに利用されるトマトは、完熟しても色づきが浅い「桃太郎」などのピンク系トマトが主流でした。
近年、イタリア料理の流行などで世界の主流である赤系トマトの認知が高まり、また一方で生活習慣病を予防する「リコピン」が注目され、一般の店頭でも完熟した赤系トマトに注目が集まっています。

ピンク系トマト(食用):支柱で茎を支えながら脇芽を摘み、上へ上へと伸びるように育てられます。この栽培方法はビニールハウスにも向くため一年中収穫が可能です。
赤系トマト(加工用): 栽培コストを下げるという理由もあり、より多く日光を浴びることができるよう、支柱を使わず地面をはわせるように育てます。このため収穫時期はトマトの旬である真夏限定。赤系トマトはピンク系トマトよりも野生種に近いため、こうした自然の姿に近い育て方が向いているのです。

◆ 国別摂取量No.1はギリシャ
FAO(国際連合食糧農業機関、本部:ローマ)のデータで、国別の人口1人あたりのトマト摂取量を見ると、世界第1位はギリシャ。2004年8月の「第28回オリンピック」の開催国となるギリシャの日常的な料理は、オリーブオイルとトマトペーストをベースにした、肉、魚、野菜料理です。特に地中海の東に位置するクレタ島の料理は近年“長寿食”と評価されています。
トマトに含まれる「リコピン」はオリーブオイル等の油と一緒に摂ると吸収率が高くなり、効果も倍増。
トマトとオリーブオイルの相性は抜群です。是非夏ばて解消の切り札にしてください!

◆ リコピンとは?
トマトの赤い色素は「リコピン」という成分で、とりわけ「抗酸化作用」が強いことが分かっています。
「リコピン」は「カロテノイド」(動植物に含まれる、赤や黄色、オレンジ色の色素)のひとつで、「カロテノイド」には「リコピン」のほか「β-カロテン」などがあります。「β-カロテン」はにんじんやパセリ、ほうれん草などに多く含まれ、体内でビタミンAに変化するため、早くから栄養学的に注目されていました。さらに近年、「カロテノイド」自体が強い抗酸化作用を持つことが知られるようになり、急激に注目度がアップしました。
そして、「カロテノイド」の中でも、とりわけ「リコピン」は抗酸化作用が強く、その作用は「β-カロテン」の2倍以上、ビタミンEの100倍以上にもなることが分かっっています。


近くのマーケットで、完熟のトマトが売っていました。
生で食べるには少し柔らかく、“お早めにお食べください”ということで、値段もお手ごろ。

万能ソースである「トマトソース」を作るには、これほど魅力的なトマトはありません。
お日様の光をたっぷり浴びたトマトは、自然の甘みと酸味が強く、ホール缶にはないおいしさが詰まっているから。トマトソースにするためには、もう1〜2日、室温にねかせておく必要がありました。皮がぷくりと柔らかくなった頃が作り時。日曜日の朝、9歳の娘と一緒に台所に立つことにしました。

さっと湯通しして、皮をむいて、種を取って・・・・?
いえいえ、そんな面倒なことはナシです。レストランではないのだから、少々皮が残っていても、種が入っていても、それはそれで、おいしさの素。まるごと全部いただきましょう。きれいに洗ったトマトのへたを取って、ボールの中で手で豪快につぶします。こういうの、子供はとにかく好き。目をきらきらさせて、にぎにぎクラッシュ!


鍋にオリーブ油50ccくらいたっぷりめに入れて、みじん切りしたにんにく3カケ分、たかのつめ3本を入れ、火にかけます。にんにくの香ばしい匂いがしてきたら、つぶしたトマト(今回は15個分)を加え、そのまま弱めの中火でコトコトと煮込むだけ。この量でおよそ50分。水気が半分になるまでじっくり煮込みます。
「いい匂いだねー。やっぱりパスタ?スープにしてもおいしそう。明日の朝はパンに塗って、チーズのせて焼こうよ!」
子供のテンションもだんだん上がってきたみたい。
出来上がりの目安は、音。グツグツという鍋の音が、ビチッビチッと乾いた音になったらOK。

塩を加え、火を止めて、そのまま冷まします。清潔な保存瓶に入れて冷蔵後へ。


これだけで十分味わい深いので、なるべくシンプルな料理がいいようです。わが家では、娘のリクエスト通り、オリーブを入れただけの「オリーブトマトパスタ」と、朝食の「トマトチーズパン」です。
甘酸っぱい、夏の香りがいっぱいの味わいでした。

●Cooking Card No.1「トマトチーズパン」

細めのバゲットにトマトソースをぬり、粉チーズをふってオーブントースターで焼くだけ。ハムやツナをのせるとボリュームアップ!

●Cooking Card No.2「オリーブトマトパスタ」

パスタ160gに対して、トマトソースをお玉で軽く2杯と、オリーブ8個くらいを鍋に入れて温める。少し固めにゆでたバスタを入れ、しっかりとからめる。パスタが赤く染まるまでソースとからめるのがポイント。