編集部|
食品のブランドづくりというと、一般的にはボルドーワインの格付けのようなイメージを持ってしまうのですが、それぞれの産地、例えば、特定のテロワールを格付けするような取り組みになるのでしょうか?
小西|
私たちのブランディングはさらに一歩先、地産地消とか、持続可能性とかの条件を満たした漁業ブランドを目指しています。
その代表例として、山口県での「笠戸島幸ふく」での取り組みが挙げられると思います。
ご承知のように下関と言えば、昔から最上のとらふぐが獲れることで有名です。
山口県の瀬戸内海側に面する笠戸島、ここは山口県内で数少ないとらふぐの養殖地なのですが、2019年に発生した赤潮で、ふぐが全滅するという非常事態となりました。ふぐ養殖家の東風浦さんはこれを機に、クラウドファウンディングを立ち上げ、新たな養殖とらふぐの開発を決断されたのです。
その時、同じく山口県が誇る獺祭の旭酒造の櫻井社長に、ふぐに酒造りの副産物として通常は廃棄されている焼酎粕を与えて飼料とすることをご提案。商標を「純米大吟醸育ち 笠戸島 幸ふく」と名づけ、漁業ブとして付加価値の高いふぐのブランド化を支援しました。
松井|
ふぐの養殖に、地域の資産である水や焼酎粕を循環させ、有料で処理していた“産業廃棄物”の焼酎粕を飼料としてリユースすること。この代替飼料の採用により、これまで飼料として使用されてきた天然の稚魚などを原料とする魚粉の削減にも繋がり、また栄養価の高さにより養殖ふぐの歩留まりも大きく上がりました。
地域内での有効な資源循環を図るとともに、生物多様性が基本となる海洋の持続可能な漁業のあり方にも寄与することができるわけです。
松田|
焼酎粕を与えることで改善されたふぐの身の質や弾力性、旨味を増した味を東京のトップレベルのホテルやレストランや料理店にご紹介し、シェフたちに新しいメニューのご提案をお願いしました。
食べ物の美味しさを理解していただくには、とにかく食べていただくことがベストです。そこには必ず「美味しさ」に共感してくださる“輪”が生まれるので。
2022/1/26開催:可不可×山口ふぐNIGHT! 笠戸島幸ふくを味わう一夜限りの限定ディナー
「笠戸島 幸ふく」がグランドハイアット東京にて、獺祭フェアのペアリングメニューに登場
https://gyogyobu.jp/news/20200910/
編集部|
各分野のプロフェッショナルを擁する「漁業ブ」だからこそ実現した、シームレスなブランディングサポートですね。
小西|
ただ、「漁業ブ」はあくまでも支援。どの事例も事業主体は各地域の事業者の皆さんです。日本各地の志の高いパートナーと連携し、多様な業界を縦断したコミュニティーを形成することで、漁業の未来を確かなものにするのが私たちのスタンスです。