~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2023年夏号 Ecopeople 96亀山章さんインタビュー

白神山地を分断する計画だった「青秋林道」建設現場(1987年10月)

3 世界自然遺産という考え方へ

編集部
日本における自然保護という思考が広く支持され、注目を浴びるようになったターニングポイントに白神山地のユネスコ世界自然遺産登録があったように思います。日本自然保護協会はこの登録にも動かれたと聞きます。


亀山
ユネスコが世界に点在するさまざまな遺産を“人類共通の遺産”として、保護・保全して行くための国際協力体制を築くべく、「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する国際条約」を採択したのは1972年の第17回UNESCO総会です。
そして日本では、1992年に世界遺産条約を批准し、その翌年の1993年、最初の「世界自然遺産」として白神山地が登録されたのです。当時の当協会会長・沼田眞は白神山地の貴重な自然は我が国にとってだけでなく、地球的視野からみても後世に引き渡すべき「世界的な自然遺産」だとかねてより提唱していました。ここには過去の伐採などの人の影響をほとんど受けていないブナの天然木の原生林が広域で残されています。生物多様性の観点では、広大で多様な森林環境を生息地とする希少な鳥類クマゲラをはじめ、ニホンカモシカやツキノワグマなどの大型哺乳類も生息する世界的にも貴重な森林です。この貴重な自然を守るために、1983年、白神山地の青秋林道建設計画の中止を訴えると共に、白神山地一帯のブナ原生林の保全を求める意見書の提出、翌年にはクマゲラの繁殖調査、さらに1985年にはブナ林保護キャンペーンを展開し、銀座での写真展、全国一斉ブナの森自然観察会、そして秋田では「ブナ・シンポジウム」を開催するなど、周辺住民や行政管理者の意識改革に向け、地道な活動を積み重ねてきました。こうした十余年に及ぶアピールが功を奏しての登録であると言えます。世界自然遺産となった白神山地の森林は国立公園ではなく、「白神山地自然環境保全地区」並びに「白神山地森林生態系保護地域」に指定され、入山も規制が設けられています。

秋田市におけるブナ・シンポジウム(1985年6月)







*環境庁|日本の世界自然遺産
*林野庁|世界遺産に登録された森林