「Better Recycle 湘南プロジェクト」でのスチールカップのテストマーケティング、順調に進行しているようですね。
みなみ|
ハイ。コロナ禍で3年間、開催ができなかった今年の逗子海岸映画祭(ZUSHI BEACH FILM FESTIVAL)では約4000個のスチールカップを用意し、参加者にドリンクが提供され、オープンエアの初夏のビーチという特別な環境で、テストマーケティングが実施できました。
素晴らしいですね。潮風に吹かれながらの映画鑑賞、さらにリサイクルされるスタイリッシュなスチールカップでのドリンク、参加者は思い出に残る時間を過ごされたことでしょう。さて、このようなフェスティバルではいつも問題になっていたプラ容器をスチールカップに置き換えるにまで至った「Better Recycle 湘南プロジェクト」は、どのような経緯で始まったのですか?
みなみ|
「つくる側」と「使う側」が一緒になって社会課題を解決できる、地域に根ざしたSDGsプラットフォームを作りたいと思っていた矢先、ある1枚の企画書「製造業と消費者をつなぐ地域のSDGsアクションモデル」を見たJFEスチールが、「製造業と消費者って、一番遠く対極にいるイメージ。だからこそ地域と手をとりあって本気のSDGsアクションを起こそう!」と反応してくださったんです。そこがすべての始まりでした。
早速、鎌倉市の自治体、地元メディアの『湘南スタイルマガジン』、さらに鎌倉を拠点にビーチクリーンやゴミ問題で活動するために行動を起こしている学生団体「ニューコロンブス」など、地元の方々にお声がけし、チームに参加していただき、プロジェクトがスタートしました。
最初に着手されたことは?
みなみ|
テーマである「プラ容器問題」の解決策として「貴重な資源としてリサイクルされるスチール容器に置き換える」というアイデアに、日々のゴミ回収をしている自治体、そしてテイクアウト用の容器を使用されている飲食店やカフェのオーナーたちへのヒアリングです。
プロジェクトがスタートしたのは2020年10月なのですが、コロナによる行動規制もあり、私も毎朝自分の出すゴミを見直し、減らす努力もしていたのですが、ゴミの削減を実感できずにいました。折しも、コロナ禍でのテイクアウト利用の増加等で家庭ごみも増え、道路のポイ捨ても顕著になっており、みなさんがこのアイデアに対して真剣に耳を傾けてくださいました。
確かに。行動制限による外食を控える動きからも、コロナ以降の食品容器の激増は実感としてあります。ところで、「BETTER RECYCLE 湘南プロジェクト」で提供されるスチール容器は最初からドリンク・カップに絞っていらしたのですか?
みなみ|
最初はテイクアウト容器全般、お弁当箱や巾着のような形状もイメージしたのですが、プロジェクトの進行を迅速かつシンプルに進めることを優先したいというJFEスチールの考えもあり、用途が明確で、実現性の高いスチールカップでスタートすることになりました。
スチールカップでの実施が決定し、試作段階ではどのような議論が交わされたのでしょう?
みなみ|
メーカーのテストマーケティングは通常、すでに完成品が示され、それに対して消費者のフィードバックを集計するという流れです。ただ、今回は試作段階からエンドユーザーとなる様々な立場の消費者の方々にこのプロジェクトの意義を説明した上で、カップの形状を検証するという「共創」のビジョンの下で進行しました。この間の喧々諤々の議論は、“新しいふつう” の導入にとって重要な「常に本質に立ち返り、今、何を優先すべきか」をメンバー全員で共有することになりました。
トライアル段階でのアンケートやヒアリングの結果はいかがでしたか?
みなみ|
ヒアリングでは、鎌倉を訪れる観光客の目線、地元の湘南人の目線、そして提供するお店の目線で分類し、細かく検証しました。さらにアンケートの集計から、テイクアウト・カップには4つのポイントが求められることが分かってきたのです。
まずテイクアウトの必須条件である「持ち運びやすさ」、次に「美味しさ」、「捨てる・返却の回収方法」、そして「心地よい体験」。
立場が変わると、カップへの評価も微妙に異なること。そして、社会に浸透するプロダクトには「気持ちの良さ」、「楽しさ」という情緒的な感覚や未来への進化のポテンシャル感じさせることも必要であることが分かってきました。