

~地球の声に耳を傾ける~エコピープル
ピンクの壁の藁葺き屋根の家
竹所集落にあるカール・ベンクスさんご夫妻のご自宅「双鶴庵」
ピンクの壁の藁葺き屋根の家
竹所集落にあるカール・ベンクスさんご夫妻のご自宅「双鶴庵」
世界屈指の豪雪地帯として知られる新潟県、十日町市松代(まつだい)は、かつては「北国街道」の宿場町として栄えた場所でした。中山道の信濃追分から小諸、上田・高田を経て、北陸街道の直江津を結ぶ、江戸と佐渡を繋ぐ重要な脇街道。そのほぼ中間に位置する松代は、越後の名君、上杉謙信の春日山城の支城を担った松代城も聳え、近年まで雪国ならではの独自の文化と景観が継承されてきました。
しかし、1971年に開通した関越自動車道、そして近年も延長整備が続く北陸新幹線の整備によって、北国街道にほぼ並行して走る北越急行/JR「ほくほく線」の乗車数にも翳を落とし、激変する時代の変化の中で次第に賑わいを失っていました。
1993年、日本の古民家に魅せられたひとりのドイツ人が、まさに運命に導かれるように松代を訪れます。町から20キロほど離れた森の中の小さな集落、竹所(たけところ)に一目惚れした彼は、明治時代に建てられた茅葺の廃屋を土地付きで購入。二年の歳月をかけ、見事に再生させた古民家は『双鶴庵』と名付けられ、その後、各地に広がることになるベンクスさんの古民家再生の出発点となったのです。
私たちは東京を早朝に出発し、梅雨時の激しい雨が降る関越道を駆け抜け、松代ほくほく通りに面した「カールベンクス古民家カフェ『澁い-SHIBUI-』」に、待ち合わせ時間にギリギリ間に合いました。
由緒ある旅館をカフェとご自身のオフィスとして、再生した「まつだいカールベンクスハウス」の大きな扉を開けると、そこにはコーヒーの香りと優しい光、そして穏やかな時間が流れていました。
取材日|2025年6月14日
取材場所|カールベンクスハウス(新潟県十日町市松代)
インタビュー・テキスト|太田菜穂子
写真|迎 崇
カール・ベンクス Karl BENGS
建築デザイナー