編集部|
前回の取材時に田口先生がおっしゃっていらしたこと、「工業地帯はむしろ自然環境が安定している」という言葉が今も印象に残っています。工業地帯の企業は、行政が定める緑地確保や建物建設への基準となるルールが遵守されており、住宅・商業地区に比べて、環境の変化がはるかに少ないという事実。先生に指摘された時も納得したのですが、15年後の今日、弁天橋に到着し、その認識を新たにしました。
澤井|
京浜工業地帯の企業は、エリア連絡会を開催し、エリア全体の環境サーベイランスのみならず、さまざまな情報を共有し、環境保全や環境活動が支障がないよう、連携して問題解決に当たっています。
編集部|
広域かつ複数のビオトープを結んでの20年にも及ぶトンボの飛来調査、工業地帯だからこそ、粛々と継続できているのかもしれませんね。
ところで「トンボはどこまで飛ぶかフォーラム」に参加している企業は現在、何社あるのでしょう?
澤井|
弊社をはじめ、マツダ、JVCケンウッド、キリンビール、JERA、東芝エネルギーシステムズなどです。
編集部|
京浜工業地帯は日本最大の工業地帯として、創設当初から日本の基幹産業を支える企業が集積してきた長い歴史があるからこそ、市民や行政との“日常的なつながり”を大切にすることがエリア全体の発展にとって、重要であるかが共有されているのでしょうね。
澤井|
弊社の横浜本社地区は、浅野総一郎が1916年に創設した横浜造船所を端とし、以来、製鉄、重工業、造船などの事業を担い、現在のエンジニアリング事業につながっています。事業所の敷地面積は約300,000㎡、緑地面積は33,000㎡、つまり、一割強の緑地はその間、着実に生育し、この地域の環境改善に寄与しています。
山口|
2009年に実施された最初のトンボ調査では7種類だったトンボ、2022年10月までにはトンボは16種類、イトトンボは6種類と、このエリアは生物多様性の動きを支える環境が次第に整いつつあることが立証されています。
今後とも、地域の住民の皆さまに愛される「JFEトンボみち」を近隣の企業、学校、そして行政や専門家のご指導をいただき、楽しい会話の生まれる場所となるよう連携をとっていきたいと思っています。