編集部|
現場での作業がほとんどが手作業であること、それに加え、矢野さんは大地再生を『結の杜』と呼んでいらっしゃいますね。「結」という共同作業スタイルにも託されたことがあるのでしょうか?
矢野|
現在のような地球環境になってしまったのは、僕たちの近年の暮らし方そのものに端を発していると思います。効率や利益追及に都合がいい都市型、つまり、人にとって合理的で、都合のいい環境に集中して住むスタイルの都市が発展し、さらに都市間の移動のための道路は最短距離を直線で走らせる。かつての街道は自然が永年をかけ形成した自然の地形に沿ってつくられ、道は曲がりくねっていることが当たり前でした。だから、そこに流れる“気”、等圧・等速(呼吸のリズム)、空気の流れ・気の流れを分断することはなかった。これらの「風の道」、「水の道」は直線の論理の前で次々に断ち切られてゆき、独自の風土として築かれてきた循環(呼吸のリズム)は機能出来なくなってしまった。
一方、自然界の生き物たちは、お互いに影響し合い、助け合って生きています。小さな虫も草もそれぞれに自然界での“仕事”を持ってあるべき循環に貢献しています。
僕たちも大地を構成する生き物として五感を通して群れを成し、人間が自然に目を向け、自然との対話を通して繋がり、共に作業することを通して人と人も繋がり、「結」の社会が生まれることも期待しています。みんなで力を合わせれば、一人では到底不可能な大仕事だって実現できます。
自然界に与えられた群れの機能だと思います。
編集部|
そう言えば、溝に埋め込んでいた小枝や間伐して割った竹や萱もさまざまなサイズでしたね。これも「結」のあり方ですね。
矢野|
自然界には均一な素材などありえません。大小様々な動植物がいて、それぞれが絶妙な繋がり、強い連携を生み出し大地を支えています。この関係性こそが自然界の「結」、誰かに強制されたり、拒否できない義務ではなく、自然発生的に、感覚的に共に行動する気持ちが生じ、コミュニティーを動かしていく流れ。地に根ざし、地べたに這うようにして人同士も自然を通して繋がっていることを体感することが、結作業の大地の再生が末永く存続する上でも大切だと考えます。