『海に生きる』 日本の海 by 公文健太郎
ecogallery Vol.2 2021 winter

  • Curated by 太田菜穂子

    Curator’s Comment

    海は太古から生物の誕生を見守り、育み、その豊かさを分け与え、共生する「ONE WORLD (ひとつの世界)」を束ねてきました。海に愛された人間、海は私たちにその幸を惜しみなく与え、水平線の向こうにまだ見ぬ世界が存在することを予感させ、ついには大海を渡る勇気を与え、世界の広さを教えてくれました。海とは、人間にとってまさに母そのもの、養い、諌め、誘い、諭し、そして時には荒れ狂う鉄拳で厳罰をも下す“優しくも、崇めるべき存在”でした。
    近年、私たち人間はその海に対し、子として果たすべき礼節を欠き、その存在を蔑ろにしてきたのではないでしょうか。ここに捉えられた海と人間の関係にはその事実が淡々と語られています。
    「本当のこと」とは、これらの写真が語りかけるように、単純な作業の繰り返しとその丁寧な作法によって成り立っているものです。地球が大きな転機を迎えた今、私たちは海がこれからもその循環と再生の場であり続けられるよう、母なる海に誠実に向き合うべきではないでしょうか。

    海は多様で、とらえがたいのだ。海は神々しく、かつ人間的だ。
    人はだれでも、どこにいても、海の子供なのである。
    ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ

    La mer n’est pas changeante. Elle est multiple, elle est insaisissable, elle est divine et humaine.
    Quels que nous soyons, où que nous soyons, nous sommes ses enfants.
    – J.M.G. Le Clézio

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