日時|2025年11月15日(土) 13:30~16:30
会場|ベルサール八重洲
オープニングアクト|『PEACE LAND OKINOERABU』
映像制作|蓮井幹生
第6回目となる今回のテーマは、「私たちは今、どこにいるのだろうか? EARTH ONENESS – 生命の星・地球」。
沖永良部島・京都・遠野・横浜と、それぞれ異なる地域で自然と向き合う5名のプレゼンターが登壇し、活動を通じて培われた未来へのビジョンと、各地に広がる「今の景色」を共有する場となりました。

基調講演に登壇した石田秀輝氏は、まず46億年に及ぶ地球史を俯瞰しながら、人類が直面する現状に警鐘を鳴らしました。
約7万年前、人類が脳の突然変異によって「未来思考」を獲得して以降、自然を搾取し、物質的豊かさを追求してきた結果、現在の日本人の暮らしは「2.8個分の地球」を消費する状態にあると言います。
今後も人類が地球に住み続けるためには、環境負荷を自然の修復能力の範囲内、すなわち「現在の4割弱」まで削減する必要があるーー石田氏は、まさに「待ったなし」の危機的状況を指摘しました。
一方で、コロナ禍に一時的にCO₂排出量が減少した事例を挙げ、持続可能な暮らしへの転換は、「決して不可能ではない」と強調。
長年にわたり「一つの地球で暮らせる社会」をめざす研究を続けるなかで、移住先である沖永良部島で見聞きし、自らも実践してきた、自然や家族、コミュニティとの関わりを大切にする心豊かな暮らしの原理を紹介しました。
さらに、自然と寄り添い共生してきた縄文以来の日本の基層文化こそが、未来の子どもたちへバトンを渡すための重要な手がかりになると提起しました。

続いて登壇した外山リョウスケ氏は、伝統工芸の若手職人を写真黎明期の技術で表現してきた作品を示しながら、「光」と「時間」を軸に、写真表現の拡張を模索してきた自身の活動を紹介しました。
そこから展開して現在注力しているのが、写真家として「撮りたいと思う光景を創っていく」取り組みです。
外山氏は7年前から京都市の山間部に移住。近隣の高齢者が語る、かつて美しい棚田が広がっていた風景を取り戻すため、放置された戦後の植林地や、獣害対策のネットに覆われた田畑に向き合いながら、頭の中に描く理想の光景の撮影をめざしています。
その息の長い挑戦の途上にあるプロセスそのものが、写真表現の拡張として語られました。

岩手県遠野市で発酵食づくりを極める佐々木要太郎氏は、自身の自然と料理に向き合う姿勢を語りました。
20代で100年以上続く民宿を営む実家に戻り、どぶろくづくりに着手する中で、無農薬の米づくり、さらにはその基盤となる土づくりから取り組むようになった経緯を紹介。農薬を使用する水田の隣で、朝露に光る蜘蛛の巣が張った無農薬の水田や、その周囲に自生するようになったきのこの写真を示しながら、自然界が本来持つ自浄循環作用の力強さを会場に伝えました。
現在あらゆる発酵食を手がけ、世界的な評価を受ける佐々木氏。その土台にあるのは、食材を生み出す健全な土壌であるとし、「自然を本来の姿に戻し、その恵みを必要な分だけいただく」という揺るぎない思いを明言。料理においても同様に、極力食材の邪魔をせず、余計な手数を加えないという自身のスタンスを語りました。

シンポジウム後半には、横浜市と鉄鋼メーカーによる「豊かな海づくり」共同研究プロジェクトの推進チームから、浦垣直子氏(横浜市環境科学研究所)と宮田康人氏(JFEスチール株式会社)が登壇しました。
浦垣氏は、トライアスロン世界大会の開催準備に伴う山下公園前海域の水質調査を契機とする、2011年の「美しい横浜港」をめざす横浜市のプロジェクト発表に、JFEスチールから共同研究の提案を受けた官民連携の経緯を紹介しました。
山下公園前の海域に鉄鋼スラグ製品を設置することで生物の着生基盤を形成し、生物多様性の回復や水質浄化が実現した本プロジェクト。宮田氏は、2013年から着手された技術面を含む一連の取り組み内容と、これまでに得られた具体的な成果を説明しました。
また浦垣氏は、改善された海洋環境や生き物の多様性を、学校で子どもたちに教える出前授業や市民向け講座、環境イベントなどを通じて、横浜市民や次世代へ伝える環境教育に力を入れていることに言及。「横浜のシンボルである海と、そこに生きる生き物への関心を深めてもらうとともに、横浜市民であることに誇りを持ってもらえたら」と地域愛に根ざした想いを語りました。
目の前の自然と向き合い、未来や他者への影響を考えながら行動を続ける登壇者たちの姿は、10代から80代まで幅広い世代の参加者の心に深く届いたようです。
閉会後も登壇者に熱心に質問する様子が見られ、アンケートには多くの感動の声が寄せられました。
<参加者の声(抜粋)>
自身の身の回りを見渡し、考え、今できる第一歩を踏み出してみる。
自然と共生する強い意志のもとに拓かれる各地の光景を共に分かち合うことで、会場全体に生まれた確かな「共鳴」こそが、今回のシンポジウムの大きな収穫となりました。