食材ラボ富山県の海の幸、山の幸

©︎ MUKAI Takashi

第一回『白えび』



富山湾の宝石と言われる白えびは、初夏が旬の盛りです。

そして、私にとって初夏の思い出といえば、白えびのかき揚げです。
子供の頃、祖母と一緒に買い物に行って、朝どれのまだ半透明な白えびを魚屋でみつけると、その可憐な美しさに魅了されて立ち止まってしまう私。すると「お昼はかき揚げにせんまいけ(しましょう)」となり、新玉ねぎと合わせて子供の手のひらより小さいサイズのかき揚げをどんどん揚げていく祖母。その横で、どんどん食べる私。

白えびならではの芳醇な香りと上品な甘味に、瑞々しい新玉ねぎの組み合わせは季節の出会いものの中でも秀逸だと思うのですが、軽やかな食感も楽しく、止まらなくなってしまうのでした。当時は産地ならではの気軽な食材でしたが、今思えば、なんと贅沢な時間だったのでしょう。











白えびは世界で唯一、富山湾でしか漁獲されない希少な海老です。漁期は4月から11月までですが、漁師による船上での浄化や冷凍技術の向上により、今では通年楽しめるようになりました。また、冷凍したことで殻を剥いた身を刺身として食べられるようにもなり、そのコク深い甘味とまったりとした食感は唯一無二の美味しさで、国内外の食通たちを魅了しています。

富山では白えびの唐揚げや天ぷら、寿司が王道の食べ方ですが、私が大人になって感激したのは、白えび漁師がつくる白えびのペペロンチーノ。1匹ずつ丁寧にヒゲを処理し、白えびの旨みをパスタに吸わせた一皿は、シンプルイズベストのお手本にしたい至福の美味しさでした。

©︎ MUKAI Takashi    










白えび

正式名称|「シラエビ」
種小名|japonica
オキエビ科に属するエビで、日本沿岸の固有種。
白えびは富山湾特有の海底谷「あいがめ」付近の水深約150~300mに生息する体長は約5~8cmのエビ。水揚げ直後は半透明の淡いピンク色をしており、キラキラと輝くその姿から「富山湾の宝石」と呼ばれる。白えびの餌となるプランクトンに赤い色素(アスタキサンチン)が少ないことから赤海老と比較すると非常に白く、一般的な赤い甘えびの寿命が約10年と長いのに比べ、白えびは約2~3年ほど。産卵する卵の数も桁違いに少ないことから、希少性が高く珍重されている。

太平洋側では駿河湾や相模湾、日本海側では富山湾に生息するが、漁獲できる地域が少なく、富山市の岩瀬地区や射水市の新湊地区で白えび専用の漁が行われ、商業的に漁業が成り立つほど漁獲されるのは富山湾のみである。湾内の小矢部川や庄川沖の海谷がある新湊沖は白えびの漁獲が多く、地元の漁師から「えん場(エビ場)」とも呼ばれ、この海域の「シロエビ群遊海面」は、1969年に新湊市(現在の射水市)の文化財にも指定された。

白えび漁は、網の一方をブイでつなぎ、それを支点に小型底曳網漁船で網をめぐらせ引っ張る「かけまわし」という漁法で4~11月の間に行われ、最盛期は4〜5月、8〜9月と2期。富山湾の貴重な白えびの持続可能な漁業のために、新湊漁協の白えび漁船では「プール制」を導入し、期間中、漁船は2班に分かれて1日交代で出漁し、水揚げされる白えびの量を調整している。
また、水揚げ金額はプールされ、各船に均等に配分。他にも、ベテラン漁師から若手漁師にノウハウを継承する役割も担っている。


参考資料:富山県観光公式サイト「とやま観光ナビ」